●河口龍夫展 ―見えないものと見えるもの―
名古屋市美術館 12月24日まで
10月末に同時開催の兵庫県立美術館の方に行って来たので、お約束通り名古屋会場にも行ってきた。名古屋に行くのはかなり久しぶりである。
展示会場に入るとすぐ、じゃらじゃらいう音の洗礼を受ける。広い展示室の中央よりちょっと入り口寄りに置かれたアップライトピアノ(薄い鉛で覆われている)の上に、斜め上からヒマワリの種が時おり落下する。落下した種はそのまま集積し、ピアノはもうほとんど種に埋まった状態であった。見上げると、吹き抜けになっている2階に落下装置のようなものがしつらえてあり、誰かがスコップですくって次々に種を装填しているようだった。
この落下する作品以外にも、いたることろにヒマワリの種が使われている。この展覧会のために用意した種は4.5トンというから物凄い。この大量の種は終ったらどこへ行くのか、人ごとながら心配になる。
ヒマワリの種を蜜蝋で固めた作品は、豆を砂糖で固めたお菓子を思わせる。意図的に入れたのではないのだろうが、それを食べる小さな虫がいるのを発見した。そういえばヒマワリの種は人間にとっても食料であることを思い出す(炒って皮を剥いて中身を食べる)。ヒマワリを食べるのは虫やハムスターだけではないのだ。
さまざまな作品を経て、最後に2階の落下装置にたどり着くようになっている。ここでは観覧者が種を落とすことができるのであった。つまりさっきわたしが下にいるときに種を落としていたのは、ちょっと前に入った他の観覧者であったことが明らかになる。こういう参加型の作品の作り方もあるのかと感心する。
はじめはスコップで一気に、その次に手ですくって少しずつ落としてみた。下に現れた新しい観覧者が不思議そうな顔を上に向けている。意識して変化をつけて、何度か落としてあげた。
手の中に残った種をひとつ、ポケットに入れて持ち帰った。