
仙台市八木山動物公園の剥製カワウソ!
あの〜、昔の剥製って、元の形状の復元度がアヤしかったり(ラッコの毛皮のたるみをほとんど考慮しないでぱんぱんにワタ詰めて巨大化してたりとか)経年劣化で崩れちゃったりして、かわいそうだけどちょっと笑っちゃいますよね。でもこの剥製は、なかなかいい面構えに作られていると思います。

いま八木山Zooでは開園60周年特別企画展「動物園を彩ったスターたち」という展示が行われています。場所はビジターセンターの1階。その展示ケースの片隅のちょっと見えにくいところに、この剥製がおりまして・・・

そのタイトルが「インドカワウソ」なんです。みなさまご存知の通り、現在のカワウソの種の呼び名にはインドカワウソというのはありません。今回はこの個体が何者であるのか推定してみましょう。

ありゃ、大きさを推定できるもの(スケールとかペンとか)を写し込んでませんね〜。ダメですね基本がなってな〜い>自分。このあたりが実に素人仕事で申し訳ないです。目測ですいませんが、明らかにコツメよりは大きいです。

発達した鉤爪と、水かきがあります。明らかにツメナシでもない。つまり以上の2つの所見からAonyx属は除外です。

後肢の形状も同様です。白いタグには「S-026 カワウソ」と手書きで表記されています。これは園の管理番号なのでしょう。

カワウソの種を識別するポイントで重要なのがもう一箇所。はいそうです、鼻鏡の形状です。鼻鏡の上縁部がW型でもスペード型でもないので、これによってユーラシアとカナダは除外されます。

尾は普通の形と言いますか、先端の形成に苦労してるなと言うか、劣化がこのあたりから来るんだな、と言うか。くきくきっとした折れ曲がる感じはユーラシアっぽくもありますが、剥製の芯材とワタの詰まり具合でそう見えるだけかもしれません。だいたい、ユーラシアにしては体毛が短いです。

ちょっと見えにくいですが全体の印象を。体毛の短さとプロポーションからも判断して、これはビロードカワウソであろうと判断するのが妥当かな。
現在、インドカワウソという呼び名は一般に使われてないわけですが、CITESの現行(2025年版)付属書内に、
Lutrogale perspicillata ビロードカワウソ [Indian Smooth-coated Otter, Smooth-coated Otter]
という表記も見られるので、インドカワウソという呼び方が全くなかったわけでもない、のかもしれません。この個体の飼育された1970年代でしたら、カワウソのようなマイナーな動物の種名の呼び方は今よりかなり鷹揚であったことでしょう。あくまで勝手な推測ですが。
そういえば、ずいぶん前に「八木山にもカワウソが飼育されていた」という話をどなたかからうかがったような記憶があるのですがはっきりしません。現在の東門入ってすぐ左の小さい放飼場(10年ぐらい前までアメリカビーバーがいた)だった、というところまで聞いたような記憶があるんですが、ちゃんと書き留めてないので朧げな情報になってしまってる。これはダメだなあ。

「動物園を彩ったスターたち」展では剥製や骨格標本だけではなくて、園の歴代宣伝ポスターも展示されてました。これはうれしいですね。

1999年のアフリカ園リニューアル、ポスターは水中カバだったんですね。おそらく水中観察は施設的に目玉だったのでしょうから仕方ないとは思いますが、ここはやはりキリンの水モートの前の視点場からの展示景観の写真を使ってほしかったなあ・・・。坂巻加夫さん設計のあの景観は本当に世界レベルだと思います。誰も賛成してくれないので、しつこく昔の記事↓貼っときます。
キリンと同じ高さの地面からキリン撮って、キリンの手前に柵が入らない展示が八木山以外に一体どれだけあるか。坂巻さんのお仕事の素晴らしさをもう一度、じっくり考えてみたくなりました。

さてそのアフリカ園ですが、再整備事業に伴う総合獣舎建設工事が本格的に始まっていろいろ変化中でした。この吊り橋とその先のアフリカ園売店がすでに廃止になってます。旧カバサイ獣舎の2階に当たるこのアフリカ園売店、機能的なモダニズム建築なんですよね。窓の鉄サッシなんかがいい雰囲気出してました。もちろん機能的なものは機能を失ったら交換しなければいけないので、建て替えは仕方ないと思っております。とにもかくにも、工事の安全を祈念しております。
次回はホッキョクグマに戻るか、と思ってたのですが、その前にうみの杜のコツメ展示の様子もお見せしますね。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。

