
とくしま動物園のコツメカワウソ、ユメとコクサ。どっちもメスですが仲良くしてました。コクサの方はあんまり鳴かず、何となく貫録があるのですっかりオスだと思ってた。帰りぎわに飼育担当の方に聞いて驚きました。んんん?乳首あったかあ?
で、口開けてピャー!ピャー!とうるさい方のユメですが、上の写真のように彼女と遊んでいるうちに、図らずもカワウソの視力のチェックができてしまった。
とくしま動物園のカワウソ舎前の通路は狭く、しかも順路をたどっていくと必ずカワウソ舎を通ることになっています。観察場所はそんなに広い場所ではないので、家族連れなんかが来ると場所をゆずり、わたしはナナメ後ろの壁にあるベンチで座って待ってたんです。
家族連れは「あー、カワウソおったー!」などと西日本特有のオヤジギャクをそれとは意識せずに叫びながら、下の放飼場を覗き込みます。すると、ユメは何が気に入らないのか家族連れの正面から横に移動し、わたしの座ってるベンチの前まで来て、ガラスの柵ごしにこっち見て鳴くんですよ。ガラスを通して5メートルぐらいの距離です。

それが何度も繰り返されました。その証拠に、1枚目の写真のユメは濡れてないけど、2枚目は濡れてるでしょ。別のシーケンスの写真を組み合わせたのでこうなっただけ。おかげで家族連れから「何この人?」という顔を何度もされることになりました。
あー、こいつらちゃっんと見えてるんだなーと確信しましたね。目がついてるんだからそりゃ見えるだろうとか単純に片づけてはいけない。犬なんか立派な目がついているけど、視覚より嗅覚に頼ってるじゃないですか。カワウソもそうなのかもしれないと疑ってかかることが重要。でも、カワウソはぜんぜん目は悪くないみたいです。手を振って無視されたら、それはカワウソが見えてないんじゃなくて、ほんとに無視されたんだと思っていいでしょう。
陸上はいいとして、水中でもちゃんと見えているのかどうか、やっぱり気になりませんか。でもこれはまだちゃんと自分で確かめてない。
安藤元一著『ニホンカワウソ 絶滅に学ぶ保全生物学』の中に、カワウソの水中視力についての記述がありました。
陸上に適した眼を持った動物が水中に入れば、像は網膜より後方に結像するのでピンぼけの光景しか見えない。水中でものを見るには、ピント調節能力を高めるか、あるいは度の強いレンズを持たねばならない。(中略)カワウソは虹彩括約筋を発達させ、眼球を両側から押しつぶしたようにしてレンズの曲率を高め、ピントの合う幅を広くしている。
だそうです。何ともトリッキーなやつらだ。
もっとも水は常にクリアじゃないから、濁った水でも大丈夫なように、ヒゲが発達しているわけなんですが、その話はまたいずれ。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
