水門の工場 その2

では、さっそく水門工場の中へ!

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いきなり登場したのは、「森吉山ダム」向けの取水設備、直線多段式ゲートだ。このローラーゲートを4段、積み重ねて使う。ダムの水位に応じて表層の温水を取水するという、ダムファンにはおなじみのゲート。幅は何と7メートルもある。削り出され、溶接され、磨き出されたステンレスのかたまり。モノとしての存在感がありすぎてこわいほど。いったい1枚いくらするのか。

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もちろんローラーもステンレス製で、かなりの美しさ。こんなきれいな物体が完成するとダムの底の方に沈んでしまうというのも、なんか惜しい気がする。あ、これは堤体の中に仕込むわけじゃないので、まだ見える方ですか。

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ワイヤーが通る、いわゆる滑車だが、これもステンレス製の鋳物。もうこれでもかこれでもかとオールステンレスな展開で、嫌味なほど。軸受けのオイルレスメタルの柄が水玉で、ほとんど草間彌生である。あるいは実は下着は派手なの、みたいな感じもするな。

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これがその「森吉山ダム」にくっつく戸溝。長さ40メートル。簡単に言うけどみなさん40メートルのものをまっすぐに作れますか。電車2両分だよ。わたしは無理だね。絶対に曲がる。横倒しになっているうちに、いちど流しそうめんでも流してみたい。40メートルというのはそれほどの長さだ。もちろんこれもステンレス。

そしてまたひとつ、別のローラーゲートが。

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これは「箕島漁港水門」のゲートだそうだ。もちろんオールステンレス。今、水門業界ではステンレスが流行っているのか。漁港といったら一も二もなくステンレス、なのか。

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ローラーがまた極太。ヤンキー車のタイヤのごとく太い。もちろん中身の詰まったハードボイルドなステンレスのかたまり。こんなとんでもないもの回して、いったい何をたくらんでおるのか箕島漁港。もしチベット仏教のマニ車だったら、ひと回しで3億回ぐらいお経を読んだことになりそうなほどの御利益感。よくわからない例えですまん。

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箕島漁港水門の大きさは幅20メートル、高さ7.1メートル。そんなものトラックに積んで運ぶとなると広島和歌山間全面通行止めである。それも困るので、分割して作ったゲートを現地で溶接してつなぎ合わせるのだ。この斜めにカットしてあるところが溶接ポイント。ボルトで仮止めしてあるのが見える。こんなもん溶接でつなぐんだから、日本の職人の人たちってほんとにすごいと思う。WBCとかやってないで、ワールド溶接クラシックとかやればいいのに。そっちの方をわたしは見たいぞ。

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雨に濡れる屋上、じゃないよ。箕島漁港水門のゲートの表面(スキンプレート)を撮ったものだ。広すぎてほとんど何を撮ったものやらわかんなくなってる。表面の仮接続用のプレートや、吊込み用の金具なんかは、最後に削り落とすのだそうだ。なんかもったいないけど、もらっても困る大きさである。

次はもっとすごいステンレスの怪物が出るよ。

コメント

  1. 手羽 より:

    私の同級生が東京都の溶接コンテストでグランプリを取ったことが
    あります。職人の技能向上のためにそういうのがあるんだとか。
    なので、世界溶接コンテストぐらいなら本当にあるかもしれませんよ。
    ちなみに私も溶接免許もってますw

  2. バドン より:

    ステンレス萌え、アリだと思いますよ。

  3. ぴよたま より:

    ワールド溶接クラシックに大爆笑しました。
    どちらかといえば、私もWBCよりもWYCのほうが見たいです。 笑

  4. えつろ より:

    日本が優勝してるみたいです>ワールド溶接クラシック。
    http://skills007.com/15.html

  5. jsato より:

    あ、やっぱり~
    日本の溶接すごすぎ。
    世界一ってことは、今のところ宇宙一じゃないか!

  6. デハボ1000 より:

    >日本が優勝してるみたいです>ワールド溶接クラシック。
    じつは一緒に仕事をしている人が、この技能五輪溶接部門の試験委員でした。裏話も聞いていますがそれはまた。
    本当は、防食のことを考えるとSUS やSCS(鋳物)よりいいものはあるんですが、保守を考えたり、再研磨を考えたりすると選択肢が少なくなるようです。いい材質でも恒久的な接合が現場溶接では無理とか。
    ちなみに薄板のSUSの電気溶接は私も試験片用に作業しましたが、熟練工にはけちょんけちょんでした(もちろん最悪事例として使用)
    ——————–
    みなさん溶接に目が行っていますが、実はSCSのプーリーというのはバランスのいいものが創りにくい特性がありまして、これを見るとその鋳物のつくりのよさにぞくぞくします。

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