すっかりステンレスにやられてしまった。んもうステンレスずるいぞ。キミは文句なしにかっこいい。でも最大の欠点は塗装ができないことだよなあ・・・などと倒錯したことを考えつつ、次に目前に展開したのは想像を絶するようなステンレスワールドだった。

「ジェットフローゲート」という、ダムの堤体内に仕込まれるバルブのようなゲートのような装置の部品だ。言われないと水門の仲間とは思えないよね。すでにわれわれは、そういうディープなドボクの世界に入り込んでいるのだ。はたしてみんな、ついてこれてるのかな。
ジェットフローゲートは高圧スライドゲートの一種で、たいていダムの底に近い方から放流する用途に使われるため、とんでもない高い水圧がかかる。だからしっかり丈夫に作る必要がある。
たしかに、これ以上しっかりできないほど、いたるところを過剰にしっかり作ってある感じだ。

ダムの高圧ゲートの世界では、河川ゲートみたいにゴムで水漏れを押さえたりするような、悠長なことはやらない。合わせ面をつるんつるんに磨き出して、金属同士のタッチで止水するんである。だからもうつるんつるん。ここはちょっとでも水が漏れると全くシャレにならない。ダムには「暮らし安心クラシアン」とかないからね。あればあったで、ダムのトラブル8000万♪とか歌うのだろうか。

で、ここでまたびっくり。何とここでもステンレス板同士を突き合わせて溶接してあるというのである。

溶接プロキターーーー、という感じで溶接職人のみなさま登場。こでは厚さ100ミリのステンレス板を、つないでました。

え?100ミリ?
厚さ100ミリっていったい何ミリだ!という感じかと思う。何気なしに読んだだけではおそらくぜんぜん実感がわかないだろう。電話帳がだいたい40ミリで、そんなんじゃぜんぜん足らないね。広辞苑の箱まで含めた厚さがちょうど100ミリだった。広辞苑の厚さのステンレス板、これでどうだ! そんなゴージャスな鉄板がこの世の中に存在していたとは・・・まったくもってうかつだった。
昨日見てもらった箕島漁港水門と同じように、端部をV字型にカットして溶接で盛っていくのだが、100ミリを埋めるには、何と70層も盛るんだそうだ。気絶しそうな作業だ。さっきの溶接プロたち、途中で気が変になったりしないのかが心配。

で、外に出るとこんなのがころがっているんだけど、これってさっきのジェットフローゲートにつながる管路ですかね? もう頭がおなかいっぱいになってて、聞きそびれた。ちなみに直径は2700ミリです。うちより天井、高い! はっきり言ってこの中に住めるね。
次回は、もっとのんびりしたやつを。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。

コメント
こういうのってどんな溶接記号で図面指示してあるんですかね?
>100ミリを埋めるには、何と70層も盛るんだそうだ。
単純に70回盛るだけでなく、物によっては周りを加熱保温して溶接欠陥が出ないようにします。(ここまで厚いと、溶接するしりから固まって、くっつかないとか、割れの元になるとか、歪むとかあります。)あえて過剰に溶接をする場合もあります。地理的な問題でもわかるように、造船技術と近いものがあります。
この話を常石造船の技術者から聞いたときはのけぞりました。
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>合わせ面をつるんつるんに磨き出して、金属同士のタッチで止水するんである。
すりあわせですね。ダイアモンド粉を使うか、あのピカールをつかうんでしょうね。私はこっちは出来なかったです(音をあげました・・・)
すっかりデハボ様の領域に入り込んでいたようで、専門度の高いコメント恐れ入ります。
溶接の職人さんはやはり造船系がすごいらしいですね。仙台のメディアテークの複雑な構造体は、気仙沼の造船所の熟練工が溶接したという話もありました。