
辰巳水門。
水門の裏手のすぐ近くをかすめるように、かなり長い歩行者専用の橋(辰巳桜橋)がかかっていることに今ごろ気がついた。
東雲の高層マンション群やオシャレ系団地には、臨海高速の東雲駅じゃなく、地下鉄有楽町線の辰巳駅で降りてこの橋を渡るのがメインルートらしい。つまりこのエリアに住むサラリーマンやOLさんたちは、毎日朝晩この水門を横目で見ながら通勤しているということ。ちょっと不意を突かれた感じがする。東雲に住む、というのはそういうリアリティが付属するのか。今まで表側(公園や辰巳JCTのある方)からしか見ていなかったので、東雲エリアとは全く関係ないと思ってたよ。
辰巳と東雲は途中に運河があって背中合わせの関係だけど、この橋が抜け穴みたいになっている。このような、そこに住んでる人しか知らないけもの道みたいなルートを発見すると、うれしい。もっともこの場合のように、一日に何万人もの通行がありそうな繁華なルートは普通、けもの道とは呼ばない。じゃあ何と呼んだらよいのだろう。
その辰巳桜橋の、展望エリアから見た辰巳水門。時期的にやたらと吐瀉物の跡が多くてイヤだった。撮影してて胃液が逆流しそうになった。おい、水門見ながら吐くなよーと言いたくもなる。
ひょっとして宴会後、電車の中でこらえ続けて辰巳駅。何とか電車を降りたものの、辰巳桜橋の真ん中へん、辰巳水門が見えた途端に安心し、急に熱いものが込み上げてきて、みたいな流れがあるのかもしれない。要するに辰巳水門を見ると、家に帰ったような気がしてほっとするのが正しい東雲ライフである。自分的にはそれはちょっとうらやましい気がする。水門にも「生命財産を守ります」って書いてあるし、東雲エリアの守護神だな、辰巳水門(実は東雲水門というのもあるのだが、今言っている東雲エリアとは離れた、とんちんかんな方角に立っている)。
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前回書いたことを否定してしまいたい。飽きてもいいと思う。と言うか、どんどん新しいことやって、どんどん飽きるべきだな。その方が健康だ。飽きることを恐れるなんてのは、明らかに老化の現れだよな。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
