牛島達治展『記憶―原動―場』。
横浜のBankART Studio NYKで今月いっぱい。『Landmark Project II』なるイベントの一環で、2005年の再展示なのだそうだ。古い港湾倉庫の一室で、エンドレスのロープがカラカラと音を立ててずーっと回っている、という作品。
ファーストインプレッションは「におい」だった。まぎれもない大倉庫のにおい。過去にどこかで嗅いだことがある。床がアスファルトで、樽の跡が丸く凹んでいて、荷から漏れたコーヒー豆が埋まってて、というのは前に牛島さんから聞いていた通り。とにかくマッチョな空間。そこにロープが行ったり来たりで張り渡されて、部屋の端から対角線で両端が結び合うように連結されている。連結部分は富士山のごとく高く持ち上げられ、滑車を介して二つのゴミの入ったバケツがつり下げられている。ゴミはこの場所の床から出たもので、そのバケツによってロープ全体にテンションがかけられているのだ。
動力源であるモーターは一か所で、ちゃんと律義に速度制御されている。一見乱暴な動きのものが、実は完璧に制御されている、というのが牛島作品の魅力のひとつであると思う。これだけの大空間の埋め方として、これに類する作品を思いつかない。そういえば子供の頃に父の実家で見た精米機は、天井からベルトで動力が伝わってくる構造だったな、とか、母の実家近くの製粉工場にある動力装置の発する音がなぜだか恐ろしくて、その工場の脇を通るたびに泣きべそをかいていたことなんかが思い出されてきた。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
