杉本博司展、行ってきた。
巨大なモノクロプリントの数々。それはそれは壮絶なクオリティ絵巻なのだが、見ていてこっちの体温がどんどん下がっていくような感覚になってしまった。いわゆるファインプリントもほどほどのサイズで見ている分には、盆栽を愛でるような感覚がしてそれもまあ悪くないものだけれど、あそこまで大きくしてこれでもかこれでもかと見せつけられると、人間とプリントのスケールの関係が逆転し、見る側が疎外される感じが出てしまうのだ。「写真」の「プリント」を見ているはずが、いつの間にか屋外広告でも眺めているような目になっている自分にふと気がついて、何だか疲れてしまう。
コンセプトを知ってしまえばあとは1枚見ればだいたいわかる、という性質の作家だから、これはずーっと貼り付いて隅々まで眺め尽くしたいぞ、と思わせるような作品はあるわけもない(ごめんね)。だから何となく足早に、流して見てしまった。でもそんな中で、ひとつだけ例外がある。
「加速する仏」というタイトルだったか、三十三間堂の仏像を撮った写真をコマ送りで見せていくビデオ作品。48枚のイメージがスライドショー形式でループして提示されるのだが、そのスピードがだんだん早くなっていくのだ。そのうち仏像たちがじゃかじゃか踊り出すように見えてくる。そのざわざわした感じがほほ笑ましくて見入ってしまった。言っちゃあ何だが、この作品だけがデジタルくさい(笑)。デジタルビデオなんだろうからくさくて当然か。とにかく「時間を終」らせてしまったはずの杉本が時間を加速し、活性化させているじゃないか!この破綻が実にうれしい。いいぞヒロシ!
入場料1500円。ちょっと考える値段だけど、あの森タワー展望台にも入れるんだと聞いて納得。展望台を2周して元を取った気になって帰った。