杉本博司展、行ってきた。
巨大なモノクロプリントの数々。それはそれは壮絶なクオリティ絵巻なのだが、見ていてこっちの体温がどんどん下がっていくような感覚になってしまった。いわゆるファインプリントもほどほどのサイズで見ている分には、盆栽を愛でるような感覚がしてそれもまあ悪くないものだけれど、あそこまで大きくしてこれでもかこれでもかと見せつけられると、人間とプリントのスケールの関係が逆転し、見る側が疎外される感じが出てしまうのだ。「写真」の「プリント」を見ているはずが、いつの間にか屋外広告でも眺めているような目になっている自分にふと気がついて、何だか疲れてしまう。
コンセプトを知ってしまえばあとは1枚見ればだいたいわかる、という性質の作家だから、これはずーっと貼り付いて隅々まで眺め尽くしたいぞ、と思わせるような作品はあるわけもない(ごめんね)。だから何となく足早に、流して見てしまった。でもそんな中で、ひとつだけ例外がある。
「加速する仏」というタイトルだったか、三十三間堂の仏像を撮った写真をコマ送りで見せていくビデオ作品。48枚のイメージがスライドショー形式でループして提示されるのだが、そのスピードがだんだん早くなっていくのだ。そのうち仏像たちがじゃかじゃか踊り出すように見えてくる。そのざわざわした感じがほほ笑ましくて見入ってしまった。言っちゃあ何だが、この作品だけがデジタルくさい(笑)。デジタルビデオなんだろうからくさくて当然か。とにかく「時間を終」らせてしまったはずの杉本が時間を加速し、活性化させているじゃないか!この破綻が実にうれしい。いいぞヒロシ!
入場料1500円。ちょっと考える値段だけど、あの森タワー展望台にも入れるんだと聞いて納得。展望台を2周して元を取った気になって帰った。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
