つづきです。
●加藤千尋展『花信』
Yuka Sasahara Gallery 9月29日まで
前作では毒々しい原寸大植物フィギュア、という感じの立体作品だったので、DMのクジャクと日本髪の鬘のハイブリッド生物みたいなものも、何の疑いもなく立体だろうと思っていた。そしたら何と平面だと言う。知らずに直接ギャラリーに行ったとしたら、だまされたような気がしたかもしれない。分厚い下塗りのほどかされた板に描かれたアクリル画は所謂スーパーリアリズムなので、縮小して印刷で見せられたら写真と見分けがつかないわけだ。
筆致の悦楽、ということを思った。細い筆で毛の一本一本を描くことは、他人が考えるほど苦行ではないのに違いない。クジャクの頭の毛が白い宙に飛び出す様子が気持ちいい。
植物や動物のパーツをバラバラにして、イメージの連想や対比で自由に再構成するのは絵画ならではの行為である。でも本当は加藤さんの毒々しい立体作品がもっと見たいような気がする。
作品も面白いのだけど、Yuka Sasahara Galleryも一度行ってみる価値ありますね。神楽坂から赤城神社を経て目白通り方向に下りて、印刷所だの製本所のあるあたりの、奥まったビルの3階にある。もと倉庫だったギャラリーというのは近頃では珍しくもなんともないけど、ここは稼働中の工場に囲まれている。インクのにおいがただよってきて、工場の活気が充満するような空間。
気の利いた看板なんか出てないので、思いっきり迷ってたどり着いた。でもそういうのも悪くない。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
