秋の陽を背にうつらうつらしていると、ゲーテがあの世から降りてきた。
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「先日はわしのワイマールの家を訪ねてくれてありがとう」
「これはこれはゲーテさん!こんな東洋のはずれまで、いったいどうなさったんですか。とにかくゆっくりしてってください」
「そうもしておれんのじゃよ。ファンサービスやらでいろいろと忙しくてな。今日は記念に何かひとつ、置いていってやろうぞ。何なりと希望を言うてみよ」
「あ、それじゃあですね、手っ取り早く光と色がわかる攻略本みたいなもの、お願いします」
「何じゃ?おまえはわしの『色彩論』読んでおらんとでも言うのか」
「あ、すいませーん。ずっと前に買ったけど読んでないっす。読むといつも途中で眠くなっちゃうんで」
「そんなことだろうと思うたわ。それではよいか、これを見よ」
「何すか、これ?」
「おまえはいまだにあのカタブツでどうしようもないニュートンの光学だけに頼って色を掴もうとしておるのじゃろう。そんなことでは先へ進めんぞ。よいか、色というのは明と暗の境界上に現れるのじゃ。これをよーく見て考えておれ」
「あれ、もう行っちゃうんですか、もっといろいろ教えてくださいよ・・・。あ~行っちまったよ。せっかちなじいさんだよまったく」
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机の上のインチキな中国製の拡大鏡に陽が当たっていた。わたしはそれを斜めから覗いてみた。するとそこには・・・

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
