ゲーテ降臨

秋の陽を背にうつらうつらしていると、ゲーテがあの世から降りてきた。

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「先日はわしのワイマールの家を訪ねてくれてありがとう」

「これはこれはゲーテさん!こんな東洋のはずれまで、いったいどうなさったんですか。とにかくゆっくりしてってください」

「そうもしておれんのじゃよ。ファンサービスやらでいろいろと忙しくてな。今日は記念に何かひとつ、置いていってやろうぞ。何なりと希望を言うてみよ」

「あ、それじゃあですね、手っ取り早く光と色がわかる攻略本みたいなもの、お願いします」

「何じゃ?おまえはわしの『色彩論』読んでおらんとでも言うのか」

「あ、すいませーん。ずっと前に買ったけど読んでないっす。読むといつも途中で眠くなっちゃうんで」

「そんなことだろうと思うたわ。それではよいか、これを見よ」

「何すか、これ?」

「おまえはいまだにあのカタブツでどうしようもないニュートンの光学だけに頼って色を掴もうとしておるのじゃろう。そんなことでは先へ進めんぞ。よいか、色というのは明と暗の境界上に現れるのじゃ。これをよーく見て考えておれ」

「あれ、もう行っちゃうんですか、もっといろいろ教えてくださいよ・・・。あ~行っちまったよ。せっかちなじいさんだよまったく」

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机の上のインチキな中国製の拡大鏡に陽が当たっていた。わたしはそれを斜めから覗いてみた。するとそこには・・・

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