もはや上下まで管理されるのか

去年の一時期、「一眼レフがデジタルをダメにする」ということを主張していた。これにはふたつの理由があって、ひとつはデジタル一眼レフという装置のフォーマットが、銀塩時代の撮影の作法を無自覚的に継承してしまうこと(思えば自分がデジタルカメラに初めて接した10年前から、デジタルになったのだからここですべてをチャラにして、作画に関するあらゆるオルタナティブな可能性を、一度試してみるべきだ、と考えてきたのだった)。もうひとつは、カメラメーカーが単価が高くて囲い込み商売のしやすい一眼レフばかりを作りたがるあまり、コンパクト型は入門向けの廉価機のみになってしまうという危惧だ。日本のカメラ製造者はどうやら銀塩時代と全く同じことを繰り返したいらしい。各社競い合って技術開発に奔走し、銀塩一眼レフが技術的に飽和する段階まで到達した途端、一眼レフに飽きた多くのユーザーは、ライカの旧態然としたレンジファインダー機やクラシックに流れたではないか。もともと一眼レフというのはかなり限定された用途で使われる特殊なカメラなのであって、それがプロから素人まで、老若男女あまねく行き渡っている日本のカメラ消費事情というのは、やはり歪んでいると見ていいだろう。

まあ、実はそんなことはどうでもいいと思っている。カメラメーカーが生産を続けてくれなければわれわれは写真が撮れないのだ。メーカーの言い分だってわからないわけじゃないし。とにかくカメラメーカーが生産を投げ出さないでいてくれることが、一番ありがたいことなんだということが、つくづく身にしみてわかるようになった。なにしろわたしはデジタルになってから、コダック、ミノルタと使い続けてきたのである。

で、ミノルタ亡き後、某関西系のメーカーのコンパクトカメラを使っているのだが、どうもこれにはしっかりした角度センサが入っているらしく、Adobe Bridgeのような最近のビュアーで見ると、カメラの上下が逆になった状態で撮影されたコマは、わざわざ画像を180度転回させて表示してくれる。縦横の自動検出は以前から知ってたが、上下反転まで検出されて、補正されてしまうのだ。カメラが上だ、と判断した方向が上になるのであって、撮影者の意図などまるで関係ない(上下ひっくり返して撮るやつなどいない、あるいは認めない、ということなのか)。かつてのエアバスの事故の際に問題になった、人間と機械の判断のどちらを優先するのかという問題が、卑小なレベルになってここにも存在していたことに気づかされた。

自分がデジタルに感じていた「作画に関するあらゆるオルタナティブな可能性」が、こうやってまたひとつ、潰えていく。

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