50年間を一気に見渡す

なんだか「切手萌え」だなあ、と去年の今ごろ書いていたんだけど、どうやら完全に発病していたらしく、この連休は小学生以来(笑)のコレクションの整理をして過ごした。珍しくいい天気なのに撮影にも行かず、ほとんど外出せず、去年の夏に実家から持ち帰って来たボロボロのストックブックから日本の戦後の通常切手を抜き出し、新たに買った分を加えて、せっせとアルバムに整理した。リーフはIllustratorで作ってプリンタで出力し、ちゃんとヒンジを使ってトラディショナルなスタイルは維持したつもり。

戦後の通常切手のうち、「銭」単位の取れた金額表示になって以降のもの130種、すべてが「使用済み」で集まった。だいたい昭和27年から平成(今、郵便局で売ってるやつ)まで。専門のコレクターの人たちから見たらぜんぜん大したことのない、おそらく駄物というよりはほとんどゴミに近いコレクションだけど、なにしろ小学生の時分に中断したままになっていたプロジェクトを、30年以上たって完結させたのだから気分は悪くない。誰に見せるつもりもないから、まさに究極の自己満足だな。

当時(1970年代)は、大人も子供のみんな切手を集めていたような不思議な時代なんだけど、みんなが目の色変えて買いあさっていたのは記念切手であり、普段使いの通常切手(最近は普通切手と呼んでる?)は誰も注意を払っていなかったように記憶している。やはり当時からちょっとヒネていたらしいわたしは、いつしか通常切手を集めるようになったのだ。考えてみるとこれは小学生にとってリーズナブルな話で、100円で20円の記念切手は5枚しか買えないが、2円通常切手の秋田犬はなんと50枚!も買えるのである(まあそういう問題だけじゃないんだけどね)。3円ホトトギスとか4円オキナエビスとか6円南天とか、そういうどうでもいいような地味な切手を、記念切手発行日でない日の郵便局の窓口に行って、引出しの中身を無理やり見せてもらいながらちまちま買ってる小学坊主だったわけだ。でも通常切手は100円を超えるような当時の自分の金銭感覚では高額なものもあって、さすがにそういうのは窓口では買えなかったけどね。

で、今回さらにそれ以前の、終戦直後からのアルバムを作ってみて思ったのだけど、だいたい1946年から1998年という50年間の印刷技術の進歩というか、もっというと紙質や穴開け精度など、作り出されたものの質の向上具合は、これはたいへんなものがあるなあと。戦前にかなりのレベルまで行って敗戦によってほとんど0まで落ちた印刷物の品質が、50年かけてこんなレベルまで来た、という情報がリーフをめくっているといやでも目に飛び込んでくる。そしてその進化っていうのは大ざっぱに見て、最初は紙質であり、次に版面の解像度であり、最後は色の彩度だったということがわかるのだ。考えてみると切手というのはその時代の印刷技術のレベルのわかる超小型サンプルみたいなものであり、それを50年分一気に並べるとかなり面白い見え方がするものなのだ。

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