Vintage article series: Humdrum 19971020 – 19991231
●こういうことを書いたら負けなので書きたくないと思っていたのだが、このところとても忙しい。おまけにいろいろと細かいトラブルまで降ってくる。こんなことを書いても何か変化が起こるわけでもないが、自分の今の状況を前提条件として、つづく話を了解してもらえることもあろうと思ってあえて、書いておく。忙しいにもいろいろあるわけだが、自分の意志に反して忙しい、という忙しさを、この場合は指している●今朝、起き抜けにメールをチェックしたら、中の1通にWO+RD [Broken Link : http://home3.highway.ne.jp/beat-k/] の小山雅嗣さんからひさびさのメールがあった。このところサイトも更新されてないような記憶があったので、どうされていたのかと思っていた。それでメールには何と、佐野元春さんとのコラボレーションサイトができたから見に来いという。そういえば何かの記事で、WO+RDを見てサイトを気に入った某大物アーティストとの仕事が進行中というような近況を何か月か前に目にしたことを思い出した。さっそく行ってみると、なるほど本当だ。これは大したものだ。サイトはまだプレオープンといった様子で、内容は予告ばかりなのだが、今後ここで一人のミュージシャンとひとりのデザイナーが繰り広げていくことになるであろう仕事の、質の高さを十分に予感させてくれる。eTHIS [Broken Link : http://www.moto20th.com/]、興味のある方は行ってみてほしい●このところ、わたしは言葉の重要さについていろいろと考えさせられている。この場合の言葉は、話し言葉ではなく、書き言葉だ。メールやWebでの対・個人、あるいは対・複数の個人との意志の疎通をになっているのは、もう全面的に書き言葉だ。書き言葉の重要度は以前よりずっと増している。わたしたちはそのことについてもっと真剣に考え、改善するための努力をしなければならない。なぜなら書き言葉をいい加減な状態で流しておくことは、それによって受け手に形成されるであろう送り手の人格(の投影)を、取り返しのつかない形で歪めてしまうことを招くことがあるからだ●思い当たる節は以前からあった。それは書き言葉を生成する環境によって、結果として出来上がる書き言葉の質が全く変化してしまうという問題だ。わたしは今、主に2種類の書き言葉生成環境に暮らしている。ひとつはMacintosh上の「EGBridge」というかな漢字変換プロセッサ。もうひとつはUNIX上で「かんな」という、こちらはフリーのかな漢字変換プロセッサだ。問題があったのは後者で、このフリーのプロセッサは、商品版のものと比べて、明らかに変換がお粗末である。UNIXをサーバ用途としてだけ使ってきた今までは、それでも大した問題は起きなかった。サーバ上で打つメールは、多くは連絡事項や技術的な問題に関するものばかりで、緻密な言い回しや微妙な熟語の変換などは不要であるからだ。しかしこのところ、厳密にいうと秋以降、ほとんどのメールの読み書きをUNIX上で行うようになってからというもの、その問題を解決しないままに大量のメールに対し、不向きの環境で向き合っていた。その歪みが最近になってじわじわと出始めているような気がしてならない●それについて先週ぐらいから、少しずつ改善をおこなっている。まずキーボードの統一。たとえばUNIX上のエディタで文章を作る場合、ControlキーがAのすぐ左側にあるキーボードでないと、とても打ちにくいという問題がある。そのようなキー配列の問題は、わたしは今まで瑣末な好みの問題であると思って、あまり気にしていなかったのだ。だからControlキーがAの左にあるものと、もっと下の方にあるものとを混在して使っていた。そのことによって何が起きるのかと言うと、打ち間違いの多発による、文体へのマイナスの影響である。明らかにこれは放置しておいてよい問題ではなかった。だからキーボードはできる限り、同じ配列のものに統一した。さらにかな漢字変換プロセッサについても、かんなを止してWnn6という商品版のものをインストールすることにした。これがまだ使い始めたばかりでチューニングができておらず、大層使いづらい。しかし一度は通らなければならない段階なので、しかたなくやり過ごすことにしている●書き言葉の重要度は多分、今後さらに増すことだろう。それに対して今、見直しを行うことができたのはよいことだった。たとえば小山さんのWO+RDにちりばめられているような、意志がそのまま言葉に結晶したような書き言葉のありようは、わたしにはまねできないものだ。しかし書き言葉を大切に取り扱うということについては、わたしでもできるはずだ。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
