Vintage article series: Humdrum 19971020 – 19991231


二十歳過ぎまで過ごした土地に何日か滞在するのはたいへんに久しぶりのことで、何だかちょっとした浦島太郎的な気分に陥って落ち着かない。昔、山だった所を造成して住宅地ができていたりするような派手目の変化は、瞬間的なショックさえやりすごしてしまえば意外と簡単に気分の片がついてしまうのだが、変化率50%、つまり変わっていないものと変わったものが半々、という状況は大変に気味が悪い。そんな町並みの中を歩いていると、悪い夢の中にでもいるような気すらしてくる。歯の根がどこか合わなくて、おまけに背中がぞくぞくするような感じがする。このはぐらかしの感覚に対する抗議は、誰にもどこにもぶつけようがない。仕方ないからこの地方に住んでいたときに行ったことがなかった別の町へわざわざ出かけて、感覚のバランスを取り戻すようなことをしている。いったい、変化とは何なのか。かつて自分の部屋であった、そして10年以上手を触れていないかつての自分の所有物(本の背表紙の多くは陽に焼けて彩度が落ちている)に囲まれて考えている。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
