このところずっと、水門の撮影を続けている。昨日も利根川下流方面へ行った。2回連続だ。東京駅から出ている鉾田行の高速バスを牛堀支所前という誰も降りないようなバス停で降りて、徒歩で北利根川の橋を渡り、9年ぶりの新横利根閘門へ到達。前に来た時は8×10のピンホールカメラを背負って、霞ヶ浦方面からえらい距離を歩いて到達した。それはよいのだが、その時はすでに日は落ち、撮影不可能だった。つまり雪辱戦ってことになるわけだ。今回はベストな天候でベストな時間帯で対峙することができてうれしかった。
9年前に比べると、1日に歩ける距離はかなり落ちている。当時は1日で20キロは平気で歩いていた。そんなの普通、車で行くんじゃない?と言われるのだけど、実は河川は車が入り込めないルート(管理用道路とかね)が結構あって、必ずしも車で行くのが有利というわけでもない。それに車を使って撮影すると、どうしても大きな水門だけをダイジェスト的に撮影することになってしまう。もうひとつ。車だと、川の「匂い」がわからなくなる。これは決定的にダメだ。空気がわかんないと風景がわかんないんだな。やはりバカみたいに延々と、堤防上を歩いて撮影することには極めて大きな意味があると思っている。堤防上で強い風に吹かれてボロボロになることが大事なんだな、きっと。風景ってのはどうしてだか知らないけど「風」の景って書くもんね。風を浴びないとダメだ。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
