Vintage article series: aperitif 20020103 – 20021205
約3年の間、止まらずに動いていた自宅サーバをついに停止する。思った以上に部屋が静かになった。音量を落とした無伴奏チェロ組曲がよく聞こえるようになる。ここに引っ越してからずっとハードディスクとファンの音がBGMであったことに気が付いて、ちょっと愕然とする。
Webサーバと寝起き(といっても同じ部屋で寝ていたわけではないが)を伴にする、というのはよく考えると不思議な体験であった。最初の数か月はかなり面白かった。なにしろ自分のサイトに来るお客さんがリアルタイムで観察できるのである。もちろんどこの誰が来ているなんてことはわかりようがない。プロバイダであれば会社とアクセスポイントがわかるだけである。しかしメールアドレスから利用しているプロバイダが割れている知人であれば、その行動パターンに照らし合わせてほぼ間違いなく来訪を知ることができるのだ。しかし今日も来てくれたといってお茶を出して接待などできるわけでもない。店主としては口を開けて画面上を流れていくログを眺めているだけである。自分としては面白いんだか面白くないんだかいまだによくわからないのだが、人にこの話をすると、たいそう面白がる人と気持ち悪がる人に反応が真っ二つに分かれる、ということも書いておこう。比率としては後者の方が若干多めだ。つまり足どりをつかまれたくないような使い方をしているのが、多くの人のネット利用の姿なのである(自分を棚に上げてこんなひねくれたことを言っていると嫌われるぞ)。
しかし、それも飽きた。Webはリアルタイムで付きあっているとすぐに煮詰まってしまう。Webは基本のフォーメーションが「すれ違い」なのだ。仕掛けておいた網にお客さんという魚が入っているのを、その翌日ぐらいに引き上げるような時間差のあるつきあい方ができないと、うまくその尻馬に乗れない。直接対峙、同時の対峙ではなく、すれ違いの対峙。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
