勝手にTシャツ屋で住み団長の小林さんがコンセプト・コンディショナーをされたDVD『団地日和』を見た。本編も素晴らしいが、とりわけ特典映像として収録されている啓蒙映画『団地への招待』には泣けた。うちにも角瓶のとなりにシェーカー、あったよ。「ちょっと前まで日本はあんなだったな」感の洪水に、ゲート閉鎖する間もなくどっぷりひたってしまった。なぜそんなに簡単に警戒水位を突破してしまったのか、というと。
今まで意識してなかったのだが、考えてみるとわたしも「住み団」だったのだ。
団地、というのはユニテ・ダビタシオンみたいなかっこいい高層長屋のことだとばかり思っていたわたしは、子供の頃に住んでいた仙台市郊外の県営のコンクリート長屋も団地であるとは認識していなかった。しかしあれって今思えば「テラスハウス」という名のれっきとした団地の一種である。3歳から小学5年まで、人間の文化的部分が形成されていくきわめて重要な時期、わたしはテラスハウスでハッピーな団地ライフを送ってしまっていた。消せない過去だ。
『団地日和』に収録されている団地のうち、阿佐ケ谷住宅については数年前まで近所に住んでたこともあって、なじみ深い。阿佐ケ谷住宅や荻窪団地は当時の散歩撮影エリアに入っていて、ちょくちょく入り込んだものだが、とにかく懐かしい空気を吸ってくらくらしてしまうばかりで、団地を建築物として突き放して対象化することは当時、できなかった。対象を醒めた目で見れないということは、それを即物的には撮影できない、ということだよね。そういう物差しができているので、わたしは団地をストレートに見ることができないのかもしれない。
ここでいちいち思い出を書くことはしないが、幼児期のわたしにとって最も重要な活動拠点は団地内の砂場であり、特に雨が降った後はパラダイスだった。揺すれば液状化しそうに水をたっぷり含んだ砂場は、当然のことながらちょっと掘るだけで水が湧き出す。水路と堤防を作り、しっかりと土木実習に明け暮れていたものだ。三つ子の魂、というやつは確かにあるが、必ずしも真っ直ぐな進路を取って開花するとは限らないのだなと思った。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。

コメント
砂場にて
いつか、もろく崩れやすい砂で無く
治水帝国をセメントで作ってやろうと
幼いころ自分の心に誓ったものです。
ダムに堤防に橋にトンネル・・・・
そんな子供の中にもドボクセンスが
抜群にイイ奴がいたんですが
そいつはのちに東大現役で入りやがりました。
そして「団地日和」ご紹介ありがとうございます。
えぇ、泣けると評判ですよ各地で、本当。
>そいつはのちに東大現役で入りやがりました。
じゃあきっと今ごろは国交省かゼネコンですね。
>えぇ、泣けると評判ですよ各地で、本当。
音声抜きだと本当に新日本紀行を見ている錯覚に陥りました。
#古関裕而メロディって耳に残るんだわ。