
ブログのアクセスログを見ていると、最近はたまに「運河エレベータ」とか「ストレピ・テュー」とかで検索をかけてくれる人がいて、うれしい限りである。なにしろすでに水門の段階で相当にマイナーでマニアックな存在なので、そのさらにその奥の細道である運河エレベータが人口に膾炙する(このイディオム、一度どこかで使ってみたかった)ことなど到底考えられず、一人で騒いでいても付いて来れる人がいるのか甚だ疑問であったのだ。いずれにせよ身近にないものには関心も湧きにくいので、日本ではこの先、運河エレベータが写真集になったりTシャツになったりというのは絶対にないだろう。人生の幸せを追い求めると、やはり最終的にはドイツに移住するしかないのか。
さてヘンリヒェンブルクだが、今日はその稼働メカニズムを見てほしい。ワイヤー吊りのストピューなんかと違い、何とこいつは「浮力」で上下するのだ。水槽の底に刺さっている平壌の柳京ホテルみたいな構造物が「浮き」である。
上から見るとこんな感じ。この水たまりは恐ろしいほどに深くて、そこに「浮き」がはまっているのだ。

それにしても何と濃厚な水。ここには間違っても落ちたくない。
実は浮力で上下、というのは運河エレベータでは定石で、19世紀のものも多くはこの形式だ。ドイツだと前に紹介したローテンゼーなんかがそう。ほんとにそんなもんで水の入ったくそ重い水槽が持ち上がるのか、とわたしはいまだに半信半疑だ。

wikipediaによると、このエレベータはこのとき(2006年8月)たまたま修理中だったのではなくて、何と2005年末で使用停止になっていたのだった。え、うっそー(語尾上げ)という感じだ。隣の最新鋭閘門に負けたのか。おい情けないぞ。森の木陰になどに埋まっている場合か。

前回、このエリアには新旧の閘門とエレベータが二つずつあって、と書いたが、実は使ってないエレベータが二つと、閘門の遺構と、現役の閘門がひとつだけある、ということが判明したわけだ。こんな風に身もふたもない書き方をすると情けない場所という感じになってしまうが、基本的にはドイツ人たちはみんな楽しんでいた。さてその楽しさとは?

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
