坦々と撮影に出ては淡々とデータ整理をしている。まだ本格的にプリント戦に突入していないので、プリンタの前で発狂することもなく。大体は水門サイトを始めた頃に出かけて以来、行ってなかった近場の水門に行って、当時に比べて画素数が6倍ほどに進化したデジタルカメラで垂直の出た真当な写真を撮っている。最初シリアスイメージが濃厚にあったので、真剣勝負、とばかりに額に縦皺を刻みながらの撮影行だったのが、観光花菖蒲や正体不明魚キャラの絵のついた水門などに対峙することを繰り返すうち、なんだかシリアスはどうでもよくなってきて、いつの間にかテーマはハッピーな政治色、みたいな奇怪なハイブリッド生物のごとき概念に変化してきて、そろそろ撮影を止してプリント戦を始めないと、美術館側から趣旨逸脱につき展示はご遠慮いただきたい旨の通達を受け取りそうな脱力系の珍妙奇抜な安っぽい作品に流れてしまいそうで、ちょっと困った。もう10月も後半である。
どうも自分が撮るとシリアスなイメージが生まれてこない。何でも明るく楽しげに写ってしまう。重厚な政治的存在として水門を撮ってみる当初の計略が、一枚二枚ならなんとか維持できるものの、20枚30枚と集合させてみるとどこでどう間違うんだか「ハッピーゲート」になってしまう。そうかなるほど。世の先達方がモノクロにこだわるのはかくなる理由があったのだな。モノクロにこだわるお方も、同じようにデジタルで撮ると撮った物がかわいくハッピーになっちゃうんじゃありません?それが男として恥ずかしいからモノクロなんでしょう?ダメだね~そんなのは。かわいくハッピーに耐えてこそ21世紀の鋼鉄の男であると信じています。
ハッピーゲートは仕方がないのでそのまま行ってみるとして、今、密かに目論んでいる別コンセプトが「聖人」。かなり前からイメージはあった。東方正教会の内部に掲げられた聖人イコンみたいに水門を展示してみたい。なぜなら水門は偉いから。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
