Vintage article series: Humdrum 19971020 – 19991231

●誰が言ったのか忘れてしまったのだが(わたしはこういうあいまいな引用ばっかりしているような気がする)、美術は常に最新の技術と結託して生き永らえてきた、というような一般的な了解がある。アンチ・コンピュータな言説に対抗する文脈で持ち出される物言い(つまりアンチ・アンチ・コンピュータ)であることはあえて言うまでもないが、わたしの場合、その段階からさらにもう180度ひっくり返ってて、つまりアンチ・アンチ・アンチ・コンピュータ的な態度をとり続けてきたように思う。コンピュータの力を相当に利用させてもらいながらも、それを祭り上げる方面も、それをたたく勢力に対抗する方面もキライだあ、なんてのは要するに、ズルいのだなあと正直なところ考えている●もう少しストレートに言わないとダメだ、と言われたらどうしよう。おまえはコンピュータが好きなのか?いやあ、コンピュータがらみで食わせてもらってるもんで否定する気はないんだけど、本たぁやりたくないっすねえ。ダメだダメだそんなどっちつかずなのは許されんっ!●唐突で恐縮だがここで次のプロジェクトの予告。今度はWeb上のコラボレーションだ。4月1日から30日間。参加メンバーが豪華。谷口雅、小林のりお、蓑田貴子、プラスわたし。そう、わたしがいちばん無名だ(そしていちばん若いぞ)。「デジタルカメラ→Web」という生まれて間もないメソッドは写真の歴史に何かヒッカキ傷でも残すことができるのか。あるいは紅茶キノコで終わるのか。これだけの人たちがまともに取り組んでも時代は何も動かないものなのか。それとも?●冒頭の話に戻る。わたしの考えはこうだ。もともと技術と美術(芸術)は一緒のものだった。これは間違いない。だとすると最新の技術から遠い美術ほど、実は本来の美術から離れていること言うこともできる。さらに伝統や権威だけを振りかざす行為が美術であると勘違いされるようになってしまっているが、伝統や権威なんてのは後からついてくるしっぽのようなものに過ぎない。現代に生きて美術の切り端の部分を目指す者は、どうしてもコンピュータとつきあわなければいけないというのは、こりゃもう自明だろう。


