Vintage article series: CAXAPOB 20030111 – 20030923
ウェブ上で知りあったリトアニアの写真家、イグナス・ウルボナスと二人コラボレーションをやることになった。これまでウェブフォトのコラボレーションは国内の作家間でしか成立しないものと思っていた。しかしここへ来てわれわれの考えも少しずつではあるが、海外へ浸透しているようにも思われる。だいたいにおいて、現実空間のギャラリーをベースにしない写真展、というものは海外ではほとんど理解されない。デジタルが写真界を席巻してもファインアートフォト・シリアスフォトの領域には関係がない。むしろいっそうの保守化が進んでしまっているようにも見える。ウェブはあくまでアーカイブ、あるいは作品紹介という旧態然とした位置に置かれたままだ。そんな中でウェブベースの写真表現行為に根底部分で共鳴する海外の作家が現れるようになったことは、単純にうれしい。しかもそれがヨーロッパの非西欧圏、失礼ながらマイナーな地域との接続であるところに何か意味深いものを感じる。ヨーロッパもイギリス、ドイツ、フランスなんかはガチガチの構造ができ上がってしまって、柔軟な表現形態(単なる表層的な表現スタイルではなく、もっと作家のあり方として根底的なもの)が取れないのではないかなどと勘ぐりたくなる。あるいは何か目新しいことを始めるやいなや、既存の資本をバックにした美術業界のシステムにさっと取り込まれてしまうのだ。旧ソ連地域には多分それがない。小林のりお、高橋明洋の個展がロシアで行われたという現象も、それを裏付けるものだろう。旧ソ連地域は経済的にボロボロだが、そんな中にもネットは浸透して、旧来の価値構造が崩壊した廃虚にツタが絡まるように、「新しいやり方」が繁茂しだしている。そう思うことにする。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
