Vintage article series: Humdrum 19971020 – 19991231

23年前、つまり1975年の録音テープを聞きながらこれを打っている。これがまあ何と、ほとんど完全に聞けるのだ。再生装置が良くなっている分、むしろ当時よりいい音で聞こえるぐらいだ。別に特殊な保存をしたわけでも何でもなく、本棚の片隅に放置してあったテープだ。そもそも磁気データというものは、太陽が何かの拍子にイレギュラーな爆発をして強烈な磁気嵐が地球にやってくれば一巻の終わり、ということになっている(本当か?)。しかし幸いなことにこの23年間、磁気嵐は起こらなかった。したがってアナログながら磁気情報を今でも取り出すことができる。23年前の自分の声(まだ声変りしてない!)を聞く、という行為は極めて不気味だ。この感覚は写真でも起きるが、聴覚情報の方が何だか身体感覚を直接的に刺激するらしく、気持ち悪さは一層強い。それにしても依然として時間というものがわからない。どうやったら時間のしっぽを掴むことができるのであろうか。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
