河原温はバイオグラフィまで作品

Vintage article series: aperitif 20020103 – 20021205

自分の展覧会でもないのに、終わると疲れが出る。ちょっとたちの悪い疲れ。疲れの質が違う感じだ。自分の展覧会が終わったあとの疲れの方がまだマシかもしれない。
気持ちに穴の開いたような時には、河原温の図録を眺めることが多い。面白いことに河原の作品は一応物体として結実しているにもかかわらず、所有欲を全く刺激しない。一点や二点の作品を所有したところで、河原の茫漠とした作品世界を自分の中に取り込んで愛玩することなどできるはずもない。だから図録で十分、あるいは見た、という経験だけで十分なのだ。そう思わせる強さが頼もしい。そういえばこのフランクフルト現代美術館で買った図録を見ていて以前気がついたこと。河原はバイオグラフィまでも作品領域の中に組み込んでいる。展覧会のオープニングの日なのかどうだかわからないが、作家履歴のページに項目はたったのひとつだけで、それは(1991年6月6日)21348日と、ドイツ語、フランス語、英語で書いてあるのだ。

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