
岡山の池田動物園のカナダカワウソ、ママさん。21歳。人間で21歳でママとか言われると、そりゃヤンママだろうと思うわけですが、カワウソ界で21歳は超高齢域。とっくに母親業は終わられて、ご主人ももう何年も前になくされて、いまや悠々自適のばーちゃんライフ、という境遇でいらっしゃいます。
あ、肝心なことを忘れてた。人間で言ったら100歳越えです。ご覧のとおり、もう歯もお悪いようで、アジも頭から食べないでしっぽから噛みつきます。頭は残します。それでもさすがはカナダカワウソで、いちどに500グラムもたいらげます。どうでもいい話ですが、わたしはカワウソがアジを食べているのを見るたびに、日中でもアジのタタキで一杯やりたくなって困ります。
歩くときも太いしっぽを引きずっちゃったりするので、コンクリートに擦れて出血したりすることもあるそうで、おいたわしい。ママさんはカナダカワウソとしては小柄で、ぺたぺた歩く姿は実にばーちゃんっぽい。お会いしたのは昨年11月ですが、カナダカワウソだけあって寒いほうが元気になるそうなので、低温ぎみの今年の冬はきっとお元気にお過ごしのことでしょう。
日本の動物園・水族館にいるカワウソは圧倒的にコツメカワウソが多く、カナダカワウソは減少傾向にあります。数が多くないのでコツメのように国内繁殖をさせるのが難しくなり、また動物ディーラーの方でもカナダを扱わなくなっていると聞きます。この調子でいくと将来、国内でカナダカワウソが見られなくなるかもしれません。なにしろ徒党を組んで雪すべりなんかする、ゆかいなひとたちなので、いまカワウソがいない旭山動物園では、ぜひコツメじゃなくてカナダを入れてほしいものですね、などと勝手なことを言う。
あ、上の写真、左上に光球が写っていてオカルトな感じですが、カワウソとカメラの間にあるフェンスの交差部に、陽が当たって光っているのがアウトフォーカスしただけです。でも「エネルギーボールを吐き出す幸福の長寿カワウソ」に見えなくもないので、みなさんも池田動物園にカワウソ初詣に行ってみては。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
