はぎわらさんがドキドキしてくれてるので、最後にもう一度、トンネル回りを見てみようか。
中央のトンネル。

3本並行してあるトンネルのうち、これだけ壁面のすそが絞られていない。つまり断面が馬蹄形じゃなくてU字型。なぜだろう?
そういえば導流堤も左右対称にはなっておらず、中央トンネル側の面はテーパーのかかり方がまっすぐに近いのだろうか、と思ったのだけど。これって「写真のウソ」か。この写真だけ見てると、どっちが本当なんだか、撮った本人でもわからなってくる。

どうも現場ではちゃんと見えてないようで、後に写真を見て気がつくことがいろいろと多い。それは立体が苦手、という自分の資質の問題もさることながら、相手がやたらとでかいために、肉眼では全体のかたちが把握できないのだと思う。
まあ、ざっと見て一発でかたちが掴めてたら、今ごろは建築家とか彫刻家になってたでしょって。そんな仕事してないってことは、やはり死ぬまで立体物に翻弄されてすごすことになるんだな仕方ないか。

この角度から見ると、かなりバタバタと作ったような印象がある。周囲の山腹の処理とか、面のつながりのこなれてない感じとか。
この放水路、着工が1951年で、完成が1965年なのだが、実は完成前の1958年に巨大な台風による歴史的な大洪水が起きてしまった。それが世に言う「狩野川台風」なのだが、そんな状況下ではやはりじっくり作り上げるというよりは、とにかく完成を急がなければいけないという、せっぱ詰まった工事になったのではないか。そういう切実さの痕跡が見えているのかもしれない。
放水路内にも、しっかり水位のアピールがあるね。


佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
