『おたくの本懐』

長山靖生著・ちくま文庫。『コレクターシップ』という本が加筆され文庫化されて、このタイトルに化けている。つまりこの本はもともとおたく論ではなく、コレクター論が語られているものだ。よくあるおたくの生態の話などではなく、広義のおたく的生き方が成立するための共通基盤とも言うべき、コレクター精神について論じられているのだ。全編にわたり何か所も「そうだそうだ、その通り!」と思わずひざを打ちたくなる主張が現れる。特に共感した部分を引用しておくと、

「我々が惹かれるものが、既成の分類では一見関係のないいくつかの分野に散らばっているとしたら、それはひとつのチャンスであるといえるだろう。それは、とりもなおさず、我々のなかに既成の価値観とは異なる独自の体系の萌芽が潜んでいる証左にほかならないからである。もし既成の価値観から見て、それらが非統一的であるなら、自分の嗜好の統一性を説明する理論を創り出せばいい」

いいこと言うなあ。心から共感してしまった。何でみんな既存のカテゴリーに沿って生きているんだろう。人が違えば、時代が違えばカテゴリーだって変わるんだ。他人の決めたカテゴリーに従うことなんかないんだよ。ってことだよね。そうそう、古今のコレクターの巨人たちのエピソードも面白い。あの昭南博物館館長、徳川義親侯爵も出てくるぞ。

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