Vintage article series: jsato.org | talk 20040315 – 20041027
何の権威があって「正しい」なんて言えるのか、なんて突っ込まないでほしいのだ。ただこれが何となく正しいような気がしてならないので「正しい」と主張してみたい。花見の話である。
まず、人がいないこと。そのためには誰でも知ってる花見の名所ではなく、何の因果か桜の木が植わっている、というような曖昧な場所を発見することが肝要。次に参加者が日常的な顔ぶれでなく、できれば年ごとの変化が楽しめること。だから職場の同僚と、なんていうのは最悪で、そんな花見だったらしない方がいいのではないかと思う。さらにアプローチがほどほどに困難であること。日常の生活エリアから離れてるがだいたい2時間以内で到達でき、なおかつそんなところに一体何しに行くんだよ、というようなちょっと謎めいた場所がよろしい。
別にそういうポリシーが先にあって始めたわけでもないのだが、上記の要件を満たす花見の宴を今年も開催した(まったくもっておめでたいことではある)。もう6年続いている。場所は利根川畔の某所、大きな水門のたもと。その曖昧な場所はかつては公園として使われていたものだ。たしか5年ほど前には桜祭り町民カラオケ大会とやらも開かれていたような記憶がある。町民行事を名乗る割には参加者はせいぜい2、30人ほどであり、中には野良仕事の片手間なのかトラクターで乗りつけ一曲うなって帰るような手合もいて、そんなローカルムードの炸裂する片隅に他所者のわれわれも宴を張らせてもらっていた。カラオケがうるさくないこともなかったのだが、それはそれで妙な風情があってよかった。しかしいつの間にかその町内イベントはどこか別の場所に移ったらしく、数年来その場所はほとんどわれわれの貸し切りの状態になってしまっている。これではプライベートビーチならぬプライベート花見場である。ちょっと寂しいようなありがたいような、あるいはもったいないような気持ちで毎年、花を見せてもらっている。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
