Vintage article series: CAXAPOB 20030111 – 20030923
いわゆる写真家業界、の中には入っていないつもりだ。しかし日ごろからあちこちで写真の話をしている。そんな自分の存在が、断層上の建物のように思えることが時々ある。大きなズレの上にまたがって立っているような居心地の悪さ、とでも言おうか。ウェブ写真以外の写真にほとんど興味が持てなくなっている。大嶋浩の言う「写真的アクチュアリティ」の欠如がいよいよはっきりと感じられるから。バルトがプンクトゥムを言い出してからこの方、写真家たちは自分の生きている時間の中にそれを無理やり表出させようと無駄に力んでいないか。時間的距離感を必要以上に意識してそれを演出していないか。必要以上に寝かされて練りあげられたイメージは、写真的アクチュアリティを減じることを考えたことはないのだろうか。Pascal Nietoの日記写真のページをぼけーっと眺めていたら、彼のおそらくパリでの生活の断片が、何の意図もなく投げ出されているようなイメージがあった。向こう側にある実在がイメージとなって飛んでくる。こっちのイメージも同じように飛んで行ったことだろう。地球を半周して日常生活の断片イメージがネット上で交錯する。一瞬、アクチュアリティが発火する。イメージをこねくり回して作り上げるのでなく、イメージを飛ばしてぶつけること。誰かのおぜん立てに乗ってメディアを借り、イメージの広まっていくのを誰かの力にゆだねるのではなく、ロデオよろしくネットワークメディアという荒馬を乗りこなし、コントロールの欠如という事態にもみくちゃにされながら、イメージを撒いて回ること。まさに今を生きている感じがする。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
