目黒川水門の水門扉 図柄決定!
~地域住民と連携した水門扉の塗り替え~
(東京都港湾局・報道発表資料)
だそうである。
つまりこの、ただ赤く塗っただけの殺風景な(おそらく「悪い景観」として挙げられそうな)扉体も、この冬で見納めということだ。
水門の扉体に絵なんか描いちゃいけない、なんてことは言わない。採用された作品の絵柄が特に悪いとも思わない(ただ、扉体が2枚あるからと言って、2人の入選作品を並べようという決定になったのだとしたら大いに疑問。2枚を連続した空間として使わないと効果的ではないだろう)。
もし、水門の扉体が殺風景で困るから、何とかしてくれ、お金はいくらでも出す、と言われたら、わたしならこうする。
【案1】 金赤(印刷色で最も目立つ赤だ)1色塗り・・・目黒川水門の現状とあまり違いはなく、派手目になるだけ。でも金赤1色で愛されている岩淵水門(恋水の表紙)の例もあるので意外に侮れない案。
【案2】キャラクター利用・・・ありものキャラは高いので、ANAのパンダ飛行機みたいにオリジナルキャラ開発の線を狙う。近くにある古川水門の無名のお魚キャラクターを展開させる手もある。今回の入選作もそのままでなくて、キャラ化のアレンジを施せばいけるかも。
あれ?これじゃ今回の塗り替えを支持してるみたいだ(笑)。
いやいや違うぞ。
やっぱり何かがひっかかるのだ。
全体を解決しなければならない大きな問題を棚に上げたまま、手の届く範囲内で何とかとりつくろってしまおうとするような、気持ちの悪さがあるのだ。
まず水門のようなインフラ施設に絵を描くのは、それに注目してほしい、もっと愛してほしい、という行政側の願いがあるからだろう。それだったら水門の表面に興味を持たせるのではなくて、役割や機能の方に興味を持たせなければならないのではないか。
今の水門は、われわれ一般人が近寄って見学したりできるような仕様になっていない。むしろ一般人が興味を持って近づくのを妨げるような作りだったりする。これは作られた時代の空気を考えれば、仕方のないことなのかもしれない。事故が起きたときの責任を取りたくないから、フェンスでかこってしまえ、という考え方を責めるのは簡単だが、実は難しい問題があるということはわかっている。
それでも、何とかして積極的に見せる工夫をする必要があると思うのだ。それも表層を見せるのではなくて、存在の根幹のところを見せる工夫だ。どんなふうに動くのか、中はどうなっているのか。そういうものを見たい人が以前とはくらべものにならないほど増えている、ということを考えてほしい。
あ、どんな絵になってもかまわないのだけど、色だけは派手目にした方がいい。まちがっても扉体を消し去るような色を選ばないことが肝要だと思う。危険だけど必要なもの、は目立っているべきなのだ。
コメント
トラックバックがうまくいかないので、コメントで。
僕のブログにこの記事に関すること書かせていただきました。
http://kazaru.sblo.jp/article/8920614.html
Casalさま(笑)、コメントありがとうございます。
「水門扉の色/絵」というのは、デザインが表層的に適用される典型的な事例ですね。ここにもまた、背景にまでデザインが浸透しなければいけないフィールド、が存在しているというわけだ。
ご無沙汰しております。
あくまで個人的な意見ですが、景観法なんてのができましたように、昨今の行政側の願いは「注目」よりも、景観との調和。色遣いも、どちらかというと、周囲から浮かすというよりも、周囲への埋没を指向しているような気がしています。仮に派手な色を使って、それを毎日眺める周辺のお客様からまたご意見をちょうだいしても仕方ないですしね。それ故に「地域住民の提案を取り入れての水門の塗り替え」となっているのかと思います。
>扉体が2枚あるからと言って、2人の入選作品を並べよう
報道資料を一通り呼んでみたのですが、作品の大きさ的にも横長ですし、2枚を連続した空間として使い、背合で両面という感じなのかなと思いました。まぁ、本題でないことは承知ですが。
こちらこそ、ご無沙汰です。いつも勝手なこと言ってて申し訳ない。そういう役割(か?)なので許してね。
さてその「周囲への埋没指向」がこの10年、著しく進んだように思うのですよ。日常的に目障りだという声があるから、そういう風に進んだのだろうと推測してます。しかし水門の色が目立ちすぎるので何とかしろ、という具体的な声があるという事実は知らないのですよ(資料化されたものをもしご存知でしたらこっそり教えてください)。
わたしが気になるのは以下の2点ですね。
1. 役に立つのは認めるけど、見えないようにやってほしい、みたいな指向は、長い目で見て有益なのか。
2. 何でもかんでも景観配慮、なるべく目立たないようにと、自主規制的な動きになってないか。
おとりあげ下さいまして、恐縮です。
>しかし水門の色が目立ちすぎるので何とかしろ
なんて声、全く無いと思います。世間一般の人の認識なんて、そんなもんぢゃないのか、と。色すら関心を持たれない。だから画でも描いてみようか、と。ただ色を塗り直しても、鉄橋の錆止めと大差ないですが、画を描くことによって初めてニュースになり、関心を持ってもらえる、と。
ま、憲法改正から半世紀を経て主権在民もすっかり定着し、官の権威はすっかり埋没し、軟弱になりました、てなわけで。