Vintage article series: Humdrum 19971020 – 19991231
●4か月ほどサボっていた、ピンホールで水門を撮るプロジェクトを昨日から再開した。2月の個展が終わってすぐにスタートして、6月の梅雨の最中まで続けて中断していた。さすがに雨の中、軽いピンホールカメラとはいえ8×10の暗箱を取り回すのに疲れてしまったのと、利根川を中流域から河口堰まで一応、歩いてしまったのとで気力が萎えてしまったのだ。それにしても土砂降りの中、傘をさして三脚を立て8×10の暗箱をセットアップする、というのはちょっとした気違い行為ではあった。面白いことに、目の前すべてにピントが合ってしまう(というかフォーカスという概念のない)ピンホールは、何とフィルターに付いた雨滴まで律儀に写してしまうのである。しかしそれはあまり美しい結果をもたらさないので拭き取らねばならぬ。そんなこんなで箱が濡れないように傘を差し掛け、フィルターの雨滴をハンカチで拭き取りながら自分は濡れながら撮った一枚は、必ずしも「使える」一枚になるとは限らない。こういう努力は報われないことの方が多い。それを考えるにつけ昨日は秋の晴天下、天国のような撮影であった。しかし天国的な緊張感のないシチュエーションというのは、引きぶたを閉め忘れたままフィルムホルダーを暗箱から抜いてしまう、というような笑える行為をも引き出す。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
