
どうもよくわかんないのだけど、カワウソって「かわいい」んだろうか?
かわいい、という形容詞自体、定義が広範かつ曖昧で、しかも人によって定義域が違っていたりする。そんなものを持ち出して真偽を考えること自体、意味ないことは承知の上なのだけど、前からずっと気になっているのだ。

かわいくない、と言っているのではない。もちろんかわいいと思う。でも「かわいい」の本体からはみ出す部分の魅力がかなり大きくて、しばしば「かわいい」の本体が霞んでしまうことすらある、ということを言ってみたかった。なんだそりゃ。
突然ですが、ビールにはじめてホップで苦味をつけた人は偉いなあ、と思う。苦くないビールなんて、考えてみれば程度よく腐った麦汁のようなものであって、それはきっと味としてはあまりおいしくないと思う。もしおいしいのなら、そういうビールが存在するはずだが、今まで飲んだことないぞ。
カワウソって、ビールのホップに相当する部分の割合が大きい動物のような気がする。

んー、そういう問題ではないな。とにかく、どうしてこれほどまでに、わたしはカワウソが気になるのか。
容貌や生態や仕草といった要素をいちいち挙げずに、全体から感じる印象だけで何とか考えてみたいのだけど。考えられるひとつは、両義性なのかなと思う。
愛らしいけど、どこかうさんくさいところがある。手足が短くて一見どんくさいようだけど、動きはスピーディで体は流線型っぽくて、よく見るとかっこいい。
カワウソは、そういうった対立する傾向を兼ね備えている。そしてそこに大きな問題がある。それを写真で伝えることは、結構むずかしいのだ。

今回、カワウソ本を作るにあたって、写真の選択を編集者さんにお任せしてしまった。自分で選ぶと、「かわいい」からはみ出した部分だけを重点的に選ぶ恐れがあり、マニアックであまり売れ行きの芳しくない本が出来てしまうからだ。それは森林資源の無駄遣いである。
中心を外したり、裏の目に張ったり、というのをずっとやってきた関係上、そういうズラしみたいなものが染みついている自分であった。いいかげんそういうのはやめよう、人生の後半はスカさないで真っ直ぐに投げよう、なんて考えるけどそうそう自分でできるもんじゃない。なぜなら真っ直ぐ投げる方法を忘れてしまっていたから(笑)。というわけで、セレクションはぜんぶお任せ。すいませんでした>編集者さま

「かわいいとかかわいくないとか、こっちには関係ねえんだよ」

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。

コメント
カワウソのかわいさですか・・・
私は家族そろって仲良くじゃれあう
彼らの姿にかわいさを感じますねぇ。
だっていいじゃないですか、
家族仲の良い姿って。
好奇心旺盛で、遊ぶことが大好きで、
すぐ団子になって親兄弟にじゃれあう様子が
自分の娘達とイメージが被って、
もう何と言えずカワイイのですよ。
本、楽しみにしてますね~
>Reiさん
なーるほど。そういう見方もあるんだなあ。
行動というか生態というか、そこにぐっと来ることもある、と。
そういう考え方してなかったので目ウロコです。
もっとも家族いっしょなのはコツメカワウソやツメナシカワウソだけで、ユーラシアやカナダは母子家庭らしいですよー。