ドイツで撮影した、運河関係施設のプリントをしている。
それらはウェブで進行しているシリーズとは全く関係ないものであり、ウェブで公開するつもりはない。もっともモチーフとしては「Floodgates・水門」とは関係大ありなんだけど、あのサイトは日本のちまちました水門の、ちまちました記録というコンセプトで続けている、やはりちまちましたプロジェクトなので、ヨーロッパの運河リフトなんていう豪儀な施設を一緒に見せるというのはかなりマッチングが悪いような気がする。実はそういう調子でお蔵入りになっている写真が結構あって、まったくもったいないことだ。出し惜しみしてるんじゃないよ。撮ったら何でも見せりゃいいってもんじゃないだろうということと、単独で説明要素として写真を使いたくない、というということだ。そしてお蔵入りになる写真は、ほとんどが「正しい」モードで撮られているんだ(笑)。
去年と今年の2回続けて、個展のプリントは和紙を使った。それはエプソンから特別に提供してもらったもので、試作段階らしくかなりクセの強い発色をする(グレーを出すと緑にころぶ)。それが面白くて2度も使ったのだが、さすがに3度は使えないだろう。ところでこの紙、デジタルくささを消してしまう魔法の紙なのである。まだインクジェット用サイジング技術の発展段階の途中で作られた和紙だからか、にじみが結構あって、それがジャギーやJPEGノイズを埋めてしまい、何となく見れるプリントができてしまうのだ。もちろん最低でもA2ぐらいに出して、引いて見る必要はある。A4なんかで手に取って見るようなプリントは無理だ。メーカーのエンジニアやマニアが嫌う偽色、っていうのかな、あのエッジが紫色になっちゃうような現象。あれがこの紙に出すと実に美しく感じられるから面白い。
それで今、面白がって使っているのは普通のマット紙。これも写真用紙と比べてにじみが出る分、クセのある絵になるようだ。スタンダードな光沢紙、半光沢紙に出した時よりも粒状感がなくなり、フラットでぺたっとした、作り物っぽい感じに仕上がる。これも一般には「塗り絵」とか言われて嫌われているらしいけど、わたしは好きだ。ツブツブの残ったフィルムみたいなテクスチャより、こっちの方がずっといい。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
