
(2010年5月撮影)海遊館のラッコ、エレン。【2026.10.18 記事を公開してすぐに指摘があり、この写真はピカなのでは、という可能性が出てきました。この日は3頭しか出ていなかった、という前提で書いているのですが、実はエレンははじめからずっと陸上にいたのではないか。とするとこの記事中で水にいるエレンはすべてピカである可能性がある、ということを取り急ぎ書いておきます】
わたしがラッコを初めて撮影したのは海遊館で、2009年のことでした。以来、8階のコツメカワウソが寝てしまうとヒマになるので、7階まで降りてラッコを撮り、また8階に戻ってコツメを撮り、みたいなことをしていました。8階7階は海遊館の展示のスタート地点であり、まだお客さんがバラけてくれないエリアなので、人出の多い時間帯は撮影も移動も苦労しましたっけ(←まあ順路を逆走しているあんたが悪いよね)

さて、いきなりですがフィーディングタイムになりました。魚の切り身をもらっているのはパタです。毛の色がまだ若い感じだったのですね。正面から撮ると結構、白いんだけど。

これもフィーディング中ですが、水面まで降りてます。左に並んだ白いのはエレン。

エレンは水に浸かると目の細さが目立ちますね。

こっちはパタ。食後の氷を食べてるところか。
実はこの日のラッコ撮影ですが、当時は「エレンとパタがいるなあ」という程度の認識で終わってて、写真をこんな記事↓に使っただけでした。つまり今までお蔵入り状態になってた。

最近ようやく個体識別ができるようになったので、記事↑内に名前を入れてみたり。

それで、今回のデータ発掘作業で、とんでもないことに気づきまして。ちょっと上の写真をご覧ください。
なんと、エレンとパタ以外に、誰かいる! 手前で泳いでいる3頭目、いったい誰よ?

16年前のわたしは、この個体をまるっきり識別してなかったのですから、どうかしてます。申し訳ないけど、当時のわたしはそれだけラッコに対する関心が低かった、ということです。今考えると、ものすごくもったいないことしてた。

こんなにわかりやすいルックスなのに!

このガンガン泳ぎ系の、ワイルド系の個体は、ジュンだそうです。今回、信頼できる筋の方にご教示いただきました。

ジュンは1993年6月、南知多の生まれ。2005年2月に海遊館に移動してます。
ロフタスさんのnote(海遊館のラッコたち|ロフタス)を参考にさせていただいてます。この頃の海遊館は個体の情報、特に死亡を公開していないため、ジュンがいつまで生存していたのかは公式の情報がありません。
これは別に海遊館に限ったことでもなく、特に大きな水族館で個体が入れ替わりで展示されるようなところでは、非公開のところも多かったように思います。今の感覚では考えられませんが、ちょっと前までは、まあそういうものでした。

エレンのこんな表情の写真を次に並べてしまうと、凶暴なオスから逃げ惑うラッコ女子、みたいに読めるかもですが実際はそんなことはなく、至ってなごやかなアリューシャン列島水槽でした。

なんかエレン特集みたいになってますが、実際にエレンがいっぱい撮れてまして、今回はもうエレン特集でいいかと思います。
さて、このあたりで一旦、7階のラッコ展示を離れ、8階のコツメ展示に戻っています。行ったり来たりで、実に迷惑な客になっててごめんね。

この記事↑の9枚目(コツメが葉っぱを持っているコマ)まで撮って、再び7階ラッコ展示に戻ってきました。

すでにエレンは陸上にいて、すっかり乾いたモフモフ毛でゴロゴロしていました。このショットはすでに公開済みです。実にエレンだわ!って感じのする一枚です。

あ、言い忘れました。エレンの識別ポイントは、鼻の上部を横に走るシワというか筋、です。鼻の傷や模様が識別ポイントとしてとても役立ちます。

ジュンも陸上で昼寝してた。

若いパタは水上で寝ていました。このコマはすでに公表したものとは別のショットです。ライティングの関係で、なんか必要以上にゴージャスに撮れてます。
みんな寝てますが、まだ夕方ではありません。実はこの後、この日に海遊館に出張してきた目的であるコツメベビーの公開を見に行くため、一度地表まで降りています。このイベントもすごい手間のかかったものだったので、ぜひレポート記事↓をご覧ください。

さて、この時期の海遊館ですが、ポスターにラッコが使われていました。

寝ているラッコを使ったポスターというのは珍しいのではないかと思うのですが、夜展示の告知なので絵柄としてはぴったりと言えます。このポスター中で、寝ながらセンター張ってるのが、エレンです。
最後におまけ。2010年当時、海遊館には4頭のラッコが飼育されていたはずですが、この日は3頭しか出てない。別の日にもう1頭を写していなかったかどうか、探してみたところ・・・
ありました!

翌2011年の3月撮影のデータから発掘したこちらのコマが、ピカの可能性が高いです。ピカはパタの母なのでパタに似てます。1993年にアラスカから来た野生由来のメス4頭(ピカ、エレン、ベル、ユニ)のうち、2011年時点で2頭が存命であったということです。わたしがピカを写せたのはどうやらこの日だけのようで、きわめつきに貴重な一枚の発見となりました。
カワウソに比べてラッコの個体識別が難しいのは、もちろんラッコ側の外見や毛皮の濡れ乾きの問題もありますが、ガラス越しの展示場で、ラッコを観察できる位置や、撮影できる明るさが限られていたことが大きいのではないかと。今(2026年)ほどではないにしてもやはり人気動物ですから、特に海遊館のようにお客さんが多い館では、長時間粘って撮影するようなことはやりにくかった、という事情も考えられます。
ところで今回はパタの写真が少ないので、よく撮れている別の日の写真でまた記事を出したいと思います。
何がどのように作用した結果なのか、わたしの今年はラッコの撮影データを発掘しまくる年になってしまい、自分でも驚いています。以前はラッコの個体識別なんてあきらめてたのに。難易度が高いものほどのめり込んでしまう性格ですけど、まさかこんな展開になるとはね。今後、かごしま水族館、のとじま水族館、マリンピア日本海のデータが埋蔵されているので、まだ昔ラッコが発掘できそうです。そうそう、大洗もあるんだけど、あの曇りガラス越しで見せられる写真になるのかな。
↓ラッコ記事の一覧です↓


佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
