
(2012年11月撮影)マリンワールド海の中道のラッコ、マリン。全力子育て中でした、その3。
昔撮ったままで公開してなかったラッコの写真データを発掘し、最新の現像処理で可視化する企画を続けています。2012年当時のマリンワールド海の中道のラッコの状況については、1、2回目の記事↓をご覧ください。



左側にマリンとベビーラッコ、「仕切り柵」の右側にリロ。

お待たせしました。リロです。若いです。

光線の具合で、毛が白く撮れたりしますね。マリンの方が気になります。

気合の入ったアクティブな泳ぎっぷりです。

もう一度あらためて、リロです。

『リロぼん』によると、マリンとマナを同居させ、リロは裏のプールで1頭収容となるのが2012年12月4日からとなっていますが、この11月の撮影時、すでにそれに近い体制になっていたことが見て取れます。
その後、2013年4月からリロとマリンの再同居になり(その期間はマナは裏のプール?)、マリンの亡くなった後、2016年3月からマナとの合流練習、2016年9月から展示プールで合流とあります。
残念ながらその期間、わたしはラッコ撮影をサボってたので、この次のリロの撮影は2023年になってしまいます。また11年後↓にお会いしましょう。

マリン側に戻ります。

見た目にはこんな感じで、実にのどかな風景なんですけどね。実は必死の子育てだったのです。
もちろんすべてのラッコの子育ては、命懸けである、と言ってもいいものです。人間の感覚からすると何とも無理のある育て方のように感じてしまうから。でも生物の生態を、効率重視の人間の価値観で測ってはいけないので、われわれはただ「見る」ことしかできない。

この日のマリンは、こんな優しい表情してる時もありました。

浮いてるとはいえ、お腹に2キロ前後のベビーラッコを乗せっぱなしの状態、楽なはずがありません。

グルーミングした毛に息を吹き込んでいるのかな。

この場面は、ベビーラッコのお尻を舐めて、排泄を促しているのでしょうか。あるいは授乳体勢のままで毛に息を吹き込んでる様子?

持ち上げて向きを変えたりして、ひたすらグルーミングを行っています。

再び上陸中のベビーラッコ。しっかり育っているように見えました。 見えたのですが…

くわえて動かすのはカワウソと同じだなあ、とか思ってました。
でも、
正常に発育しているベビーラッコは、もっともっと元気に動くものなのかもしれない。わたしはそれを何となく感じていたのかもしれないけど、そう意識するのを避けていたような気がする。今思うと。

実は、マリンのグルーミング、十分なものではなかったのでした。
この撮影の翌日、この仔は人工哺育に切り替えられたのだそうです。可能な限り人工哺育にならないほうがラッコ親子のためになるわけですから、マナの時と同じで、再びの苦渋の決断であったはずです。
このあたりの情報ですが、こんなとき頼りになるのは、やはりmunyさんの「らっこ!らっこ!ラッコ!」です。「2012年のラッコニュース」内の11月6日、11月8日の記録として、読むのがつらい記述があります。リンク先の、館のサイトのお知らせはすでに消去されています。
マスメディア系経由の発表記事なども、もう辿れないわけですが、唯一、毎日jpからの引用で二次的、三次的情報ではありますが、こんな記事が残っていました。
ニュース
ラッコの赤ちゃんが死ぬ [福岡]
(掲載日時:2012年11月8日)
2012年11月7日(水)、福岡市東区の水族館「マリンワールド海の中道」で、10月18日に生まれたラッコの雄の赤ちゃんが死んだ。母親による毛づくろいが不十分で、体温低下の危険性が高まったと判断し、11月5日(月)に人工哺育に切り替え。
飼育員が体温を上げるためタオルで毛をこするなどしたが、呼吸が止まったという。
ラッコは海外からの輸入停止や生育の難しさから、国内の飼育数が年々減少している。
発信:毎日jp>マリンワールド海の中道 (海の中道海洋生態科学館) 施設詳細ページへ
何というかクールな記述で、事の重大さがわかってない(実は当時のわたしもわかってなかった)記事なのですが、処置の経緯や、この仔がオスであったことの発表があったことはわかります。
ひょっとして日本の飼育ラッコは、これ以降の出産がないのかな、と思って調べたら、翌2013年7月20日に大洗で生まれた(生存8日)のが最後だったようです。
つまり2012年から2013年にかけてのこの時期に、日本の飼育ラッコの繁殖が終了してしまったわけです。

マリンも、ベビーラッコも、がんばっていた。素朴な書き方だけど。
この日、その様子をたまたま記録していたわたしには、それを多くの人が見られる形で公開しておく義務のようなものがあったんだと思う。
今回、14年後にようやくそれを果たすことができました。遅くなってごめんなさい。
↓ラッコ記事の一覧です↓


佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
