Vintage article series: jsato.org | talk 20040315 – 20041027

個展が土曜に終った。プリントをすべてはがしてしまった白々しいギャラリーの壁はいつもながら虚しいものだが、同時に何か「清々した」といったような気分もわき上がってくる。画像とは所詮、紙切れ一枚なのだ。いや、紙切れ一枚の厚さもないのだ。
「写真用紙」という呪縛からちょっと離れてみようと思った。和紙のテクスチャの中にしみ込んだ画像は、思ったほど和風にもならず、軽い凹凸のある壁紙に液晶プロジェクタで投影している画像を見ているような気分にすらなった。紙の存在を「無いことにする」のではなく、強調してやる。その結果、画像の方も自分を主張しはじめる。紙の表層に仮定としての深みを作り出す印画紙由来の写真用紙とは、画像の立ち現れ方が根本的に違っている。それは紙の物質性に対するフェティッシュな感覚とは分離して語られ得るものだろう。画像が画像にすぎないことが切迫的に感得されるのは、緻密なプリントではなく案外こういうラフなものに対峙したときなのではないかと思えてくる。
だが一方で、そんなことはどうでもいいとも思っている。和紙上のインクジェットプリントに面白がれたのは、単に見慣れない雰囲気の画像が現れたというだけに過ぎないような気もする。紙による違いを強調して語るのならば、古新聞紙にでもプリントすればもっと過激な主張ができるだろう。そういう問題でもない。プリントの形成という問題よりも、紙という物質のあり方そのものが、今は不思議に思える。画像はその問題のはるかに上の方を、軽やかに逃げ去っていくのだ。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
