Vintage article series: Humdrum 19971020 – 19991231
もう一度、地べたから始め直してみよう、と思った。webの特性であるリアルタイムに近い情報の保存再生と考えの表出を通じて何ができていくのかを、自分でも実験してみようと思う。従来の手法では作品化されないで埋没されていくような情報でも、このメディアではどうやら残すことができるようである。作者側の取捨選択を経て唯一無二の作品ができあがっていくのでなく、各々の受容者との関係において各々の作品ができ上がっていくような構造が見え隠れしている。
●26か月前、この場に掲げた第一回文章の末尾を再度、持ち出したのには理由がある。本日、1999年12月31日をもって「Humdrum 埋没する日常」を止めることにしたのだ●瑣末な日常の感覚を他者に伝達するという目的に対して、この26か月間、文章という媒体はまあまあの性能を出してくれたように思う。しかしわたしはこの段階に安住するつもりはない。母語による文章という安易かつ安全第一な方法をできる限り閉ざして、あえてそれを使うのに努力や工夫を要求されるような媒体を使って思考の表出を行ってみることにやはり興味がある。今後はそういう不安定な媒体につきまとう困難や危険をむしろ甘受することによって、もっと大きな構造と格闘していきたいと考えている●というわけで、これでわたしの1900年代も、終わり。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
