Vintage article series: CAXAPOB 20030111 – 20030923
ご興味を持っていただいたこと、うれしく思います●しかし、あなたのいささか性急な「理由」へのこだわりに対しては、残念ながらあなたが望まれているような「明確な解答」を差し上げることはできないでしょう。●すでにわたしのサイト中の制作ノートに当たる部分で触れていますが、長い時間をかけて展開した結果として立ち至った事態について、現時点での現象に基づいて簡単な説明で済ませてしまうことは大きな誤解を招くことが予想されます。われわれはすでに「こういう理由である」→「ああ、なるほど」という表層的な因果関係の段階を通り過ぎてしまっています。あなたがものごとにはすべて理由があるはずだ、と思われるているのであれば、この先は話が通じないかもしれません。そうでないことを願って話を続けます。●もっと大きな枠組みからお話をさせてもらえば、「逆さ」は何かへの回答、つまりあなたの期待するような何らかの効果への意図として、機能しているわけではないのだと考えています。重要なのは回答を得ることではなく、むしろ問題を考えることです。それが解けない問題なら最高です。イメージにおける上下はなぜ重力の上下と一致しているのか、という問題であってもいいし、なぜ現代のイメージは近代の3次元の物理空間の認識に従属して成立しているのか、という問題の立て方であってもいいと思います。他にも言い方は無限にあるでしょう。大事なのは問題提起のオリジナリティです。●さらにあなたはこう言うかもしれない「なぜ問題を立てなければいけないのか」。それは自分で考えてください。●これは突っぱねているわけでもはぐらかしているわけでもありません。わたしの立てた問題をあなたを含む多くのひとたちに一緒に考えてもらいたいのです。今のイメージのありように疑いを持つこと。それなしには新しい表現はありえません。既存のスタイル、制度の中で評価をもらうことがアーティストの仕事ではないと思っています。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
