Vintage article series: Humdrum 19971020 – 19991231
●CRTが終わってから、いや正確に言うとやっている最中から、写真からの離脱ということを考えていた。自分がネットワークの上で展開していこうとしているアクションは、今までパッケージとして写真という概念をかぶせていたわけだが、よくよく考えるとそれがどうも様々な「足かせ」となっていることが見えてきたからだ。何だかよくわからないものを曝す時に、パッケージングは大切であることは間違いない。ただしある段階以上になったとき、パッケージを借りた了解がむしろ足を引っ張って、アクション自体がそれ以上先に行くことを妨げてしまうことがある。どうやらそういう局面にさしかかってきたと思われる●離脱は垂直方向に行われるのが常である。今までタブーとみなされてきたことをやってみる、ってことだ。しかし、それとてかなり危うい。たとえば、スティーグリッツに始まる現代写真、「ストレートフォト」で定義されたそれに異を唱えれば、それは写真という体制内での小規模な離脱に終わってしまう。さらに写真を完全に脱ぎ捨ててしまったとしても、その瞬間から視覚芸術という写真の外側の体制に包含されるだけである。それでは80年代以降の写真を使っていろいろなアーティストたちがやったのと、まだ同じ地平をうろうろしていることになる。この水平構造はおそらくここ数十年、ほとんど変化していないだろうと思う。そこからの垂直方向への離脱、これは極めてむずかしいように思える。でも誰かが必ずやっちゃうことだろう。それも今後数年以内に、だ。考えてみれば面白い時代に生まれたものである。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
