Vintage article series: aperitif 20020103 – 20021205
問題はウェブ空間と現実空間をどうやって共存させるか、という点に尽きる。ウェブだけでは強度が足りない。では現実空間で無心にがんばっていればそれでいいのかというと、やはりそこには何かしらのしらじらしさが漂う。無心の行為に単純に感動してしまえるほど、われわれは素朴ではなくなってしまっている。ウェブの存在を全く無視した表現活動はもはや考えにくい。すべての表現活動は、他の人に何らかの情報を伝える行為である以上、その伝達媒体の変化という現象に無関係ではいられないからだ。
ところで、突然ではあるが人間はオカルトがないと生きていけない。今のデジタル環境で欠けているものは実はその部分だったりする。オカルトというと何だかマガマガしい感じがするので表現にまつわる神秘性、とでもしておいたほうがいいのかもしれない。画像でも音でも想像しやすい方を想像してもらえばいいのだが、とにかくデジタル化によってノイズレベルが下がったことにより、いままでもやもやーっと存在していた闇が退行した。すると今まで神秘と思われていた現象の化けの皮がはがれ落ちることになる。しかし闇のない論理だけの清明なデジタル世界では、人間は基本的に、もたない。そこで再びオカルトを導入することになるのである。デジタル時代の表現というのは、オカルトの導入方法が今までとは違ってくるはずなのだ。きっとそこが突破口だ。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
