
鉄塔はファンの数も多いし、自分で見なくてもいいかなと思ってたんだけど、先日サルマルヒデキさんと話をして以来、川を渡る送電線に俄然興味が湧いてきた。これは江東線(275kV)の88号。ここから対岸の江東変電所まで荒川を渡る。
正確に言うと江東線はまず先に中川を渡ってから荒川を渡るのであって、この88号は紅白に塗ったりして気合い十分な構えだが、実際には軽く中川を渡しているだけだ。本気で荒川を渡しているのはドナウ型で有名な次の89号の方である。人間でもこういう関係ってあるよね。ハッタリ型と実力型がタッグ組んでたりするような。
で、江東線のすぐ北側には葛西処理場線と南小松川線というのが渡ってて、実はこの2本は江東変電所から東岸に戻ってくるラインらしいのだ。こういうしちめんどくさい配線が渡河送電線の魅力かもしれないぞ。しかも鉄塔は江東線より立派だが電圧はたったの66kVである(6万6千ボルトはぜんぜん「たった」ではないと思うが275kVに比べるとしょぼい感じがする)。どう見ても立派な鉄塔の方が実は電圧は低い、というあたりに送電界のリレーションシップの深みがうかがい知れるのであった。やはり鉄塔は擬人化力に富んでいる。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
