関係性の方が大事

●藤幡正樹さんの「カラー・アズ・ア・コンセプト」を読む。RGBという光の三原色によって色を再現するようになって、色の物質性とそれにまとわりつく価値(絵具は色、すなわち原料によって値段が違う、といったような)が事実上、消滅し平板化してしまった、というのは決して新しい認識ではない。しかし、その事態の重大さをこれほど声高に、例証を挙げつつ丹念に指摘した人は今までいなかったように思う。CRTにおける色彩再現に対して、われわれはこれまで、あまりにも悲観的ではなかったか。モニタの個体差で色が変わってしまう、という現象に対して、冷笑的でなかったか。藤幡さんは繰り返し主張している。「それぞれの色そのものよりも、色同士の関係性の方が大事である」。これだけを抜き出すと開き直りのようにも聞こえかねないこのテーゼは、デジタル環境で視覚情報を扱っていく人間にとって指標となるような、実は大変に強力な一言であると思う。今はとにかく先に進んでみるしかないことを思い知る。

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