
愛媛県のとべ動物園のニホンカワウソ・・・の剥製。
ニホンカワウソは文字通り日本にいるカワウソなんだけど、絶滅しちゃったと言われている。歯切れの悪い書き方をしたのは、まだひっそり生息していると主張している人たちもいるからだ。公式に人の目に触れたのは1979年が最後とされている。


この剥製は昭和37年9月23日に愛媛県南宇和郡で捕獲され、とべ動物園の前身である道後動物園で飼育されていた個体。昭和44年に膀胱結石で死んだとラベルにはある。
とべ動物園でいただいた資料と突き合わせると、この剥製は南宇和郡城辺町大浜で、「砂上で衰弱し歩行不能状態のものを捕獲」されたらしい。道後動物園では松(マツ)と呼ばれて人気ものであったそうな。そういえば松の写真はニホンカワウソの例としてしばしば見ますね。野生個体なのに、人の手から魚をもらって食べていたそうです。
ところで、とべ動物園は、園のシンボルマークが何とニホンカワウソなのである。こんな動物園は他にない。

さらに、移動動物園車というのがあって、その天井にはハリボテのカワウソが乗っているらしい。びっくりだよね。
それだけニホンカワウソに対する強い思いがあるため、かえって四国の主要な動物園の中で生きたカワウソの展示のない、唯一の動物園になってしまっている。純血主義というか、そのポリシーはわからんでもないのだけど。保守的な角界ですら外国人力士があれだけいる中で、今もって筋が通ってるなあと感心はするのだけど。でもやっぱり残念。
わたしのようにわざわざニホンカワウソの剥製を見に来る入場者なんてほとんどいないだろうし、やはり生きたカワウソを見せてこその動物園だろうとは思う。あ、ちなみにニホンカワウソの剥製がいっぱいあるのは新居浜にある愛媛県総合科学博物館だそうです。そっちはそっちで一度行ってみなければ。

まあ、哺乳類なら誰でも最後は骨になる、ということを考えると、じっくり骨格標本を見るのもなかなか面白いものである。

「剥製だからってナメんじゃないわよ」
わざわざマツさんをケースから出して見せていただきました。とべ動物園のスタッフのみなさん、どうもありがとうございました。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
