
こういうのを「陸閘」と言うのだ。水門のゲートだけを陸に上げたもので、まあリクガメ(よくガラパゴスなんかにいるやつ)みたいな存在だ。陸閘の生息地は、東京なら月島晴海地区である。こんな黄緑色のやつがうようよと群生しているのでおどろいてほしい。

いつもはこんな感じでひっそりと隠れているのだ。
陸閘はスライド式のと片開き式のがあって、高潮や津波が予測されるときは電動や手動で閉まる。平時には人や車を通すためにとぎれとぎれになっている防潮堤が、陸閘の出現で連続するのだ。わかりやすいがよく考えるとかなり凄い仕掛け。
陸閘が閉まっちゃうと、その時に防潮堤の外に出ていた人や車は残念ながら戻れない。そんな冷たいことでいいのか、と思う人もいるだろうからちゃんと書いておくと、陸閘にはもちろんハシゴが付いており、それで乗り越えて戻ることはできる。何と車用の脱出ルートも1か所だけ、用意されている。この脱出ルートは平時に見ると、道路のど真ん中に作られたジャンプ台にしか見えない。とにかく東京都港湾局はちゃんと逃げ遅れた人のことを考えているので、安心してください。
さて、問題はこれを水門と見なしていいのかどうか、だ。
理論的にはこれはまぎれもなく水門の一種であると言える。なぜなら狭義の水門は、堤防の分断部分に取り付けられた門扉のことを指すからだ。陸閘も実はこれと全く同じフォーメーションをしている。

この図を描くまで自分でもいまひとつ自信が持てなかったのだが、これ見たら一目瞭然、陸閘って水門そのものじゃないか。なーんだ。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
