晩年の澁澤がどこに向かおうとしていたのかがわかる(かもしれない)一冊。古典によくあるあやかしの物語を現代語でやってるわけなんだけど、「テクニカル・ターム」とか「デジャ・ヴュ」とか、唐突に日本語化した西洋の単語が飛び出すところが不思議なひっかかりになっていて、おもしろい。水戸黄門でうっかり八兵衛が「ご隠居!こっちの旅籠の方がサービスよさそうですぜ」と言ったとか言わなかったとかいうジョークがあるけど、ちょうどそんな感じなのね。ちらし寿司の上にオリーブの実が一つ乗ってる、みたいな微妙な違和感。古典な雰囲気の幻想譚だから結末も何だかはっきりしないし、因果関係も論理性も超越したレベルでストーリーが進行して行き、あれ?と思うまもなく放り出されてしまう。これは「はぐらかし」の気持ち良さとでも言うべきか。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
