
80年代、プロレスに打ち込んでいたことがある。
打ち込むといってもリング上で実際に闘うわけじゃない。そんなことしたら死んでしまう。あくまで見る方に打ち込んだ。それもテレビで見るだけであって、まあ大した話ではない。ちょっと出だしを力みすぎた。ところで出だし、って出出しってことだよね? 字で書くと実にしつこいな「出出し」。
さて、当時(1982年ごろ)の新日プロレスは、長州力が維新軍団を率いて反旗を翻し、藤波辰巳と名勝負数え歌なんかをしつつ、プロレス革命闘争を繰り広げていたのだった。長州はいったい何に反旗を翻していたのか、藤原喜明って誰だ? ストロング・マシン1号って誰だ? そういう基本的な背景や内部事情、人的資源をまったく理解せずに、わーわーやってるのをただ面白がって見ていた。
コアなプロレスファンからはなんだコノヤローとか言われそうなヘタレなプロレスファンだったが、これはわたしが悪いわけではない。当時のわたしがヒマな大学生だったためだ。大学生をヒマにするような、当時の大学教育が悪いのである。もし本当に忙しかったら半端な態度でプロレスなんか見るわけがない。コアになるか、見ないかのどちらかだろう。
金曜夜のプロレス中継はほとんど時間内に終らず、猪木が買ったのか負けたのか、その結果を知りたいファンは翌日(翌々日か)に『東スポ』を買いに走ることになる。ネットとかないからね。
そう、東スポだ、東スポ。
このたび、その天下の東スポに、載ることになった。
別に深夜のゴミ出しをスクープされたりとかしたわけではなくて、真面目で前途有望な「水門写真家」として紹介されることになったのだ。
凄い。我ながら快挙である。自分を褒めてあげたい、という決めゼリフをずっと温存してきたわたしだが、もう今、ここで使ってしまってもいいのではないかと思う。
ということなので、みなさんも明日、1月19日発行の東スポを買っていただいて、このドボク・エンタテインメント界の快挙を噛みしめていただきたく、お願い申し上げる次第です。
あ、もちろん上のような1面見出しではないのでお間違いなく。

佐藤淳一【カワウソ写真家】 [著者情報] 実はカワウソに限らない写真家。平成19年度宮城県芸術選奨受賞。主な著書に『恋する水門』(2007年/BNN新社)、『ドボク・サミット』(共著/2009年/武蔵野美術大学出版局)、『カワウソ』(2010年/東京書籍)他がある。展覧会は『ニーダーフィノウの鉄の骨』(2006年/Gallery Maki)、『アートみやぎ2007』(2007年/宮城県美術館)、『カワウソおもろいねん!』(2013年/海遊館)、『大都会の野生カワウソ』(2018年/埼玉こども動物自然公園)他、1995年より多数開催。雑誌『ワンダーJAPAN』、『土木技術』、スポーツ紙『東京スポーツ』で写真と文を連載。『タモリ倶楽部』(2008年/テレビ朝日)、『出没!アド街ック天国』(2012年/テレビ東京)等に出演。「生きることは、見ること」が信条。芸術と研究を足してサブカルで割った「リサーチ・エンタテインメントとしての写真」を専門とし、土木構造物と野生動物という、かけ離れたふたつの領域で仕事してきました。
