デッサウのバウハウス校舎の地下にあるカフェで、昼ご飯を食べながらビールを飲む。日本では昼にビールを飲むと眠くなってその後仕事にならないのに、こちらではまったくそういうことにならない。夏でも空気が乾燥しててアルコールの抜けがいいのかもしれない。理由はどうあれありがたいことである。まだ午後の早い時間、デッサウから北へ約50キロのマグデブルクという街へ向かう。そこで乗り換えたローカル列車(Sバーン)は、見るからに強力そうな電気機関車がわずか2両の客車を押したり引いたりするという不思議な仕立てだった。大きな街の近郊区間なら電車かディーゼルカーだろうという読みははずれた。客車は2階建てになっていて、赤い巨大な壁のようだ。壁に埋め込まれた押しボタンを押すと、自動ドアが重々しく開いた。
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それで、結論からいうとその2両編成の近郊列車はとっても迫力のある走りをするものだった。電気機関車は明らかに力を持て余していて、ものすごい力で客車を押してよこした。何でそんなことがわかるのかというと、加速が異常だからである。速度計はないけど、あっという間に軽く100キロは出ていたと思う。まるでドクトル・ジバゴに出てくる革命家のなんとかが乗る専用列車みたいだ。カマトンカチの描かれた蒸気機関車1両プラス客車1両が、シベリアの雪原を爆走するやつだ。この列車、カマトンカチこそ描かれていないものの、何か根底に共通するものがあるぞと思ったら、このあたりは旧東ドイツ地域なのだった。まあ考え過ぎなんだけど。
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減速も豪快で、逆噴射でもしてるんじゃないかというような止まり方をする。これは面白いと思っているうちに、バーレバーゼーという目的の駅に着いた。周りには民家の一軒すらもない。畑と森の中にホームと跨線橋だけがあるうすら寂しい駅だ。もちろん他に誰も降りはしない。ちょっと降りるのやめたくなったけども仕方がない。空は快晴で周りはみんなイモ畑。革命は潰えて遠く、わたしの道のりも遠い。イモ畑の中の一本道を2キロ近くとぼとぼと歩き、バーレバー湖のほとりを囲む森に到達。東独時代の週末別荘地の成れの果てがオートキャンプ場になってるんです、というような風情の湖を半周して、ようやく目指すミッテルラント運河が見えてきた。爆走革命列車を降りてからすでに40分が経過していた。
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